フェルメールブルー

ラピスラズリ

17世紀オランダの画家、フェルメールは生まれ育った町から生涯出ることなく、市井や庶民の姿を描写してきた。とりわけ人物像には目もさめるようなターコイズブルーを多用した。ターコイズブルーはウルトラマリンブルーともいわれ、フェルメールの絵が後世注目されるようになり、フェルメールブルーとして用いられるようになった。

この青はラピスラズリ(瑠璃)というアフガニスタンの一部地方でしか産出しない高価な宝石を砕き、絵の具として使った物である。地方の名もなき画家がどうして、この色に行きつき、どうして高価な宝石を手に入れ、どうして惜しげもなく砕いて絵の具に使ったのか、未だにナゾである。フェルメールの使う色は黄色と青、黄色は光、青(ウルトラマリン・ラピスラズリ)は影の表現に使った。黒はまったく使わず、茶褐色と青を混ぜた色で黒の代用としたそうだ。

葛飾北斎描く富嶽三十六景中の一枚、「凱風一晴」は別名「赤富士」として有名だが、南蛮渡来の青、プルシャンブルーで背景を見事に表現した。プルシャンブルーは貴重な宝石を砕いて作る高価な絵の具だったが、当時のドイツで学者が実験中に偶然に発見した製法により、人工絵の具として量産化された。北斎がこの絵の具を使ったのはちょうどこの時期に相当する。(写真は「豊原念珠堂」HPより借用した)