◆黄金トリオ

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日本人の味覚は、食塩、化学調味料、蛋白加工分解物という「黄金トリオ」によって破壊されてきた。たんぱく加工分解物というのは、うまみのもとになるアミノ酸のことだ。たとえば、インスタントラーメンには約5gの食塩が入っていて、この量は成人男性の一日摂取量の半分に当たり、コップ一杯の海水を飲んでいるのと同じで、普通ならしょっぱくて飲めるはずがない。それが、食品添加物化学調味料と、2−3種類のたんぱく加工分解物、チキンエキスやとんこつエキスが入ると、濃厚なおいしさに変わる。まさに味覚のトリックといえる。

また、サイズの大きなカップラーメンでは麺に約30gの油が使われており、これは軽量スプーン大さじ3杯分に当たり、これも化学調味料などで巧妙に隠されている。みそ汁に粉末だしを使うのが、半ば常識化しているが、これは黄金トリオに香り付けのかつおエキスパウダーを加えたもの、この濃厚な味に慣れてしまうと、昆布やかつお節でだしを取った味噌汁が次第に物足りなくなる。

糖分も同じで、500ml入りのペットボトルのジュースには50gの糖分が溶けている。これは計量カップ半分の量で、普通では甘すぎてのどを通らないが、クエン酸やビタミンCが入ると、不思議にさっぱりとする。これに色と合成香料を足せば、「無果汁飲料」の出来上がりとなる。

以上、おっかない話ばかりだが、これが日本の現実。飽食ニッポンがたどり着いた行く末だ。中国のギョーザの汚染問題で、食の問題が大いに揺れている現状だが、その実態は、まやかしが堂々とまかり通っている現状だ。中国産の食品問題なんて、ほんの氷山の一角にすぎない。簡便さを求め、より安く、より旨くという日本人の贅沢な食生活がもたらした結果だから致し方ない。

確かに冷凍食品の進歩は目覚ましい。レンジでチンするだけで、レストラン並みのうまいものが食べられるんだから、こんなにありがたいことはない。夫婦二人きりの生活だと、材料を買っていちいち調理しても、余ってしまうのがおちだ。そんな面倒なことをしなくても、冷凍食品をチンするだけで、食事の支度が出来てしまう。とうぜん、レンジなども高級化され、かくして、日本人の食卓はこうした冷めた光景が日常茶飯事となる。とやかく言うのはたやすいが、簡便で便利になるということは年をとってくると、間違いなく有難いことではある。