◆栗名月

五稜郭

夕暮れ前から、東の空に存在感を示していた右舷の月が、中天高く昇ってきた。雲ひとつない空に煌々たる輝きを放っている。今夜は十三夜、いわゆる芋名月だそうだ。昔から旧暦八月十五日の月を「中秋の名月」と呼ぶ。毎年12ないしは13回の満月があるのに、中秋の名月だけは特別扱いされるのは、空が澄み、月が最も美しく見えるとされるのが旧暦の八月十五日、いわゆる十五夜だからだ。

十五夜は、芋(サトイモ)の収穫を祝う意味もあり、「芋名月」などとも呼ばれる。昔から、十五夜の支度だけすることを「片見月」と呼び、縁起が悪いとされ、月見は、十五夜と十三夜の両方に行われることを基本とする。十三夜の月は、食べごろの栗を供えることから栗名月とよばれる。

たとえ3−4日でも家を空けるとなると、やはり残していく植物たちが気になる。たっぷり水遣りをしておいたが、帰ってみると、ものによってはぐったりしているのもいて、申し訳ないなって気になる。改めて見てみると、ここしばらく補充していなかったせいもあり、えらく華やかさに欠ける。主力部隊のコジチャンも老齢化してしまって、勢いもないし花の数も少ないし、矮小化してしまっている。

近所の花屋で店頭を華やかに飾っている苗たちに誘われて、目新しいものを探ってみた。けっきょく、山のように手にしてきたのは、いつものように、パンジービオラ、そしてゼラチャンだった。やはり、手慣れている方が楽だし、余計な気を使わないだけ管理もしやすい。鉢植えを終わり、水撒きが済むとすむと、ぐったりとなる。

中腰での作業が多いのも腰に負担がかかる。畳に寝転がり腰を伸ばすと、あまりの恍惚感にしばしうっとり、いつのまにか、しばし中断していたタバコに手が行っている。水撒きをするとタバコが吸いたくなるのは、長年の習い性だろうか。きょうはやけにうまい。北海道でも吸わなかったのに、ま、いいか。