◆身近な風景

ハギ

4階でエレベーターを降り、通路を歩き始めると、完成すれば634mになる建設中のテレビタワー「東京スカイツリー」が見えてくる。幾つかの建物越しではあるが、よく見える。見るたんびに少しずつ高くなっているのが分かる。いつも持ち歩いているカメラを10倍ズームにして眺めると、かなりよく見える。雲の多い日なんか、雲上人のようにてっぺん付近だけが、顔をのぞかせる。家の前から都バスに乗り、終点の業平橋で降りれば、すぐ目の前に見えるはずだ。それこそ、絶好のカメラポジションとなるだろう。バスに乗れば20分足らずで着くから、楽勝なんだけど、体調に自信がなかったし、呆れるほど長く続いた猛暑のために、ためらってきた。

ようやく秋らしい陽気になり、体調も日々戻っているから、遠出のきっかけは安全運転できるタワー撮影に行こうと決めている。ただ、余りにも高すぎるので、カメラアングルに苦労しそうだ。多分ワイドにしてもダメだろうし、地べたに這いつくばるようなローアングルにしなきゃならないだろう。そうすると、老体がギシギシと悲鳴を上げそうな、無理なアングルとなるだろう。

いま住んでいる都営住宅は新築時点から入居しているが、今年で、はや17年となるそうだ。当時は赤チャンや小さな子供がウジャウジャいて、子供専用の自転車置き場はいつも満杯だった。ところが17年後のいまは子供用の自転車置き場は閑古鳥が鳴いている。それに引き替え、バイクの数がやたらと増えて、違法駐車もかなり多い。

17年前に生まれたり、ガキだったこども達が成長しているのだろう。その子たちも成人すると家を飛び出し、下宿したり、結婚したりする。かくして、この団地も世間と同じように老人だけが残されることになる筈だが。ただ当時生まれた子供は17歳、2歳のアカチャンは19歳、アルバイトしたりしてはいるが、まだ家付きというわけである。先日、エレベーターでハットするような美人に出くわした。8等身で小顔、化粧乗りが抜群に良かった。まさに「掃き溜めに鶴」「鳶が鷹を生む」状況だったが、なんと降りたのは同じ階だった。

しかも我が家の方に颯爽と歩いて行く。クソジジイが物欲しそうに後をつける構図は好ましくないので、エレベーター前にたたずんで、しばし様子をうかがった。すると、ドンドン我が家の方に近づいていく。胸をドキドキしながら見守っていたら、なんと我が家の手前、つまり隣家へ入っていった。そういえば、隣とはいえ、母親以外は没交渉だったし、娘がいたのも知っているが、顔なんて見たことがない。
その子がこんなに美しく成長してたんだ、月日の経つのは早いのう。