◆公園にて

ムクゲ

台風の余波とはいえ、恵みの雨が東京地方に降り注いだが、それもたった一日だけ、きのうから元の木阿弥、強烈な太陽が生き返り地上を睥睨し始めた。猛暑日、熱帯夜の地獄からは漸く解放されるみたいだが、亜熱帯地方特有の気象条件は依然として続くらしい。もう、ウンザリといった感じだが、秋の気配が迫っているのも一方では感じられる。

湿り気を帯びた不快な暑さを運んでいた風も爽やかになったし、夜半には涼しささえ感じるようになった。どこからか漂ってくる芳香は路地裏でひっそり咲いているキンモクセイらしい。ここ何年かは目立たなかったが、今年は妙にいらだって匂いをまき散らしているようだ。あまりにも甘い香りが強いので、若干辟易させられる。お世辞にも綺麗な花とは言えないが、やはり初秋を代表する花には違いない。

透析の帰り道、公園のベンチでサンドイッチをぱくつきながら、なんとはなしに目の前のグランドで試合している少年野球を眺めていた。初めはただ漠然と見ていただけだが、段々と興味が出てきた。興味を引かれたのは小学生の野球なのに、やけに左利きが多いということだった。親が将来を考えて強引に左利きを強いたのだろうか、ちょっと不自然な気がした。

いつのまにかネット裏に陣取って、投手の投球に見入っていた。おおむね感じたことは、やはり左腕投手が多いこと、思っていたより速い球を投げていること、生意気にも変化球を操るピッチャーもいた。しかしノーコンが多く四球が多いから、試合の進行が遅々として進まない。明らかに腕だけで投げている。このまま育ってしまえば、どいつもこいつも凡庸な投手になってしまうだろう。もっともコーチ陣の手腕次第だが。ベンチ裏には熱心は親たちが群がって、母親は自発的に選手やコーチに茶菓のサービスをしている。

思い出すなあ昔のことを。長男が小学5−6年生の時、土日は夫婦してせっせと球場に通っていた。長男が調布リトルリーグで芽を出しかけていたからである。にょうぼは茶菓接待に精を出し、コチトラはもっぱら長男の投法をビデオカメラに納めていた。むろん選手たちの送迎も進んでやったし、コーチの真似事もし、家に帰れば、自己流の熱血指導も行った。あの頃の情熱は今どこに行ってしまったんだろう。クールな応援に終始している目の前の親たちを見ながら、こんなんでいいのかって、他人事ながらヤキモキしてしまったね。