◆名セリフ

ジュリチャン

台風一過、朝晩だいぶ涼しくなってきた。このまま秋ということになれば、申し分ないのだが。さてと、名セリフといえば、真っ先に頭に浮かぶのは、あの韻を踏んだ名文句だ。「知らざあ言って聞かせやしょう。浜の真砂と五右衛門が、歌に残せし盗人の、種は尽きねえ七里ヶ浜」。歌舞伎十八番『白浪五人男』で、五人男の一人、弁天小僧菊之助の叩きつけるような口上が、立て板に水を流すような鮮やかさで、印象に残っている。

先頃亡くなった梨本勝の常套句は「恐縮でーす」、口ではそう言っておきながら、芸能人に突撃取材を敢行、遠慮会釈なく根掘り葉掘り聞いてはゴシップを作り出す名人だった。19年間・1000回も続いた「ロッテ歌のアルバム」(TBS)、昨年亡くなった玉置宏の名文句は冒頭の挨拶「1週間のご無沙汰でした」だった。「さよなら さよなら さよなら」のフレーズは映画評論家、故淀川長治の決めゼリフだった。あれは確か「日曜洋画劇場」(テレビ朝日)の掉尾を飾っていたっけ。

さて、「来週はモアベターよ」は亡くなった小森のオバチャマが映画番組で次回の映画紹介の後に、シメの言葉として使っていた。片岡鶴太郎がモノマネネタとして多用し一気に広がった。「わたしの記憶が確かならば」は「料理の鉄人」(フジテレビ)、有名シェフ2人の対決方式をとり、実力者たちは「鉄人」と称えられる。料理対決の進行役は「美食アカデニー」主宰・鹿賀丈史、大袈裟な服装と演技で、毎週このフレーズを連発した。ちなみに番組から生まれた鉄人は中華の陳健一、和の道場六三郎、フレンチの坂井宏行らだった。

「何だ、バカヤロウ」はドリフ、の荒井注のギャグの一つ、アントニオ猪木の「なんだこのやろう」と間違いやすい。「あっしには関わりのねえこって」は「木枯らし紋次郎」の主役中村敦夫が劇中で口にするセリフ。徹底して他人との関わり合いを避け、ケンカ殺法の孤独な渡世人の生き様は実に格好良かった。

「あばよ!いい夢見ろよ」は柳沢慎吾の持ちネタで、「ねるとん紅鯨団」の特番で、柳沢が女性から「ゴメンナサイ」とフラれた際の捨てゼリフだった。「普通の女の子に戻りたい」はラン・スー・ミキの三人組「キャンデーズ」が人気絶頂だった77年7月のコンサートで突然解散宣言をしたとき、ランが代表していった言葉。