◆相撲中継

パンパスグラス

朝起きると、久し振りに雨が降っていた。なんと東京は1ヶ月ぶりの雨だという。ベランダに出て、手のひらで感触を探ると、小雨なのに雨粒は大きい。行き交う人の列には色とりどりな傘の花が咲いていた。でもこんなものでは足りない。どうせ降るなら、こんな申し訳程度の雨ではなく、それこそ土砂降りぐらいでなくちゃ割が合わない。それに「しゃーない。降ってやるか」という上から目線も大いに気にくわないね。

NHKは東京・国技館で12日に初日を迎える大相撲秋場所は、テレビ、ラジオとも従来通り生中継すると発表した。角界の賭博問題などを受けて7月の名古屋場所は中継を見送ったが、日本相撲協会暴力団排除宣言を出すなど改革に着手したことから中継再開を決めた。NHKは1928年からラジオで、53年からはテレビでも大相撲を中継してきた。戦時中、ラジオ中継の一部が録音に切り替えられたことはあったが、中継の全面中止は今年の名古屋場所が初めてだった。

NHKは事件の解明が曖昧なまま初日を迎えた名古屋場所の中継を断念し、ダイジェストを流すだけという体制を敷いた。世間の目をかわす魂胆であったのは容易に想像できる。ただ、見る側にとってはいつも見慣れていた夕方の番組が消えてしまったことに違和感を覚えた。この時間帯は他に見るものがないので辛い空白の時間となった。

だからNHKが今場所からテレビ中継を再開するという発表は、暇つぶしファンにとっては当然ながら嬉しい知らせになった。ただ、NHKがなぜ、たかが大相撲に執着するのかは分からない。なにせ実況中継はNHK総合、NHKーBShi、ラジオ第一放送、ダイジェストは総合、hi、BS2など、至れるつくせりの大盤ぶるいだ。だけど、それだけではないね、裏側では数多くの魑魅魍魎がうごめいているに違いない。

具体的には元大関千代大海の違法賭博の真相究明、つまり臭いものにフタだ。下手に藪を突っついて蛇が出てくると困るので、お得意のウヤムヤ決着という禁じ手を繰り出してきた。NHKの中継再開に対する視聴者の反応は「疑惑がウヤムヤのまま再開は反対」という意見が多かったという。つまり相撲協会は疑惑の幕引きに必死だが、ファンや国民の多くは曖昧決着にむしろ「真っ黒ではないのか」との思いを強くしているのだ。