◆伝家の宝刀

カシワバアジサイ

体重が急激に増えていることを素直に喜んでいいのだろうか。空腹という物理的要求に快く応じるなんていうとかっこいいが、明らかに食べ過ぎじゃあなかろうかって当人も合点承知の助ではある。さすがに56キロの体重とは畏れ入谷の鬼子母神、クソ暑い毎日なのに、食欲はまったく健全で、嫌いな物はともかくとして、なにを食べても美味しいのだ。

しかし、食欲が増すと、当面二つの課題をクリアーしなければならなくなる。第一は当然体重のケアー、透析の基本的やり方は透析前に体重を量り、基本体重である52kgとの差異を、一気に絞り出す。例えば54kあれば、2kgの水分を排出することになる。2kG程度なら門題はないが、3kGオーバー以上となると、一気に抜いてしまえば身体が持たない。そこで、時間延長したり、次回分に上乗せすることになる。たとえ2KGでも抜かれると、終わったときフラフラになるほどだ。

第2の課題は便秘の解消である。放っておけば、コチトラの便秘たるや1週間ぐらい平気の平左という強者である。黄門様は金城鉄壁で頑固一徹、ちょっとした攻撃では開門させるのすら難しい。便秘していると、当然体重増加に影響する。そこで、伝家の宝刀を抜くことになるが、余り使いすぎると名刀の価値は減少するし、困ったもんだが、背に腹は替えられない。その宝刀とは「ブルゼニド」という、もの凄くよく効く下剤である。余り効き過ぎるので極力使用しないようにしているんだがね。

むろん医師が処方したまともな物だが、1回か2回服用すると効果覿面は確かだが、ほぼ1日中、下痢が止まらなくなる。透析中に漏らすわけにはいかないから、服用する時間帯を考えて飲むことになる。頑固な便秘も困ったもんだが、ピーシャラ、ピーシャラとやたらに鳴き声を上げる下痢も困りもんである。透析が終わった段階で、文字通り精魂を使い果たした格好となる。だからといっても、「喉元過ぎれば熱さ忘れる」の喩え通り、暑さに負けない健康な食欲を優先している。美味い物を食べてこその余生だもんなあ。