◆一陣の涼風

胸突き坂

「暑いねえ」っていうのが最近の冒頭挨拶になってしまったが、きょうもまた暑いね。いつものように開け放った窓から抜けていく風には変わりないけど、きょうはひどく淀んでいて、重く感じられる。けっこう熱風を含んでいるようだが、これを書いていても、もう眠くてしょうがない。胃腸の働きが例年にもまして絶好調、腹が減ってしょうがない。「食っちゃ寝、食っちゃ寝」の生活が続いているけど、こんなことしていていいんかいなって、いま流行の熱中症より気になる今日この頃だ。

テレビCMが始まると、音を消してやり過ごすのが習慣になっている。とりわけひどいのが子供店長が鼻につきだしたトヨタ、二流芸人のキャラクターを使ったパチンコの宣伝、真面目くさったふりをするサラ金、安い安いとはやし立てる通販会社、しつっこい外資系保険会社、ほんとうるさいなあ。最近NHKでもやたらと番組宣伝を始めた。これを繰り返しやられると、民放のCM同様鬱陶しくてかなわない。これも最近では音を消すことにしている。

やっぱみる目がある人はちゃんと見ていてくれて、正当な評価を下すもんだなあ、って感心した。朝日新聞天野祐吉のコラム「CM天気図」のことだ。広告批評が専門とは言え、いつも選ぶCMはそれぞれ正当な評価で、まさに別品の趣がある。いいCMを見ると、猛暑の中に一陣の涼風が吹き込んだような清涼感を感じる。さて、そのCM、やはりサントリーだった。いつも良質なCMを提供している数少ないスポンサーだが、またまた、名作を公開してくれた。

サントリーのウーロン茶のCMはこれまでも一貫して、健康的な中国女性を選んでいるが、今回登場するカノジョはまさに別品、つまり別嬪、それも飛び抜けて美しさがある。横顔だけの表情だが、凛として気高く気品があるのに、うなじの美しさが悩ましい。サントリーの従来の傾向から見てもモデルは中国出身の超美女だろう。まさに必見に値するCMだが、時間枠が少ないのが残念である。ゼニさえ出せば低俗なCMを平気で出してくるテレビ会社、グレシャムの法則で「悪貨が良貨を駆逐する」のである。

このモデル、居間中国一の美女と評判の高いファン・ビンビンという女優だそうだ。祐吉さんは次のように書いている。<カノジョの持っている健康で、品のある、大人の女の美しさがそう感じさせるのだ。そのふくよかな美しさはやせ過ぎ美女に占領されているいまのテレビの中では、それだけでも別品に見えるのだ。中国では物事を評価する時に1品、2品、3品と順位を付け、同じ物差しでは測れない別格の優れたものを別品と呼んだらしい。「別嬪」というのは、つまり人間の「別品」のことである>