◆涙もろくて

カワズザクラ

近頃涙もろくなってどうしようもない。年を取ってあちこちが緩んでしまったのは致し方ないとしても、とりわけ涙腺に緩みは余りにも締まりがない。テレビから聞こえてくる歌声。山口百恵が歌った名曲「秋桜」、歌っている歌手の名前は定かではなかったけど、かなり上手、情感豊かに歌っている。懐かしい歌なので、じっくり聞いてしまったのがよくなかった。涙が止めどなく流れてきて止まらない。

ダレが、なんで、こんなに人を泣かせる歌を作ったのか、それがなんと、あの「さだまさし」だった。最近では音楽家というより、コメデイアンといった趣の強い人って印象だったがね。そういえば、自分の持ち歌である「無縁坂」って名曲も母を歌った泣かせる歌だった。この細かい描写と繊細さ、とても男が想起する感性とは思えない。それにしても山口百恵の凄さがここにあるねえ。和製ポップスの旗頭である、さだまさし谷村新司、宇崎竜童などが挙って楽曲を進呈するんだから、すごかったんだなあ。

♪うすべにのコスモスが秋の日の
何気ない ひだまりに揺れている
この頃 涙だもろくなった母が
庭先でひとつせきをする

縁側でアルバムを開いては
私の幼い日の思い出を
何度も同じ話 くりかえす
独り言みたいに 小さな声で

こんな小春日和の 穏やかな日は
あなたの優しさが 浸みて来る
あした嫁ぐ私に
苦労はしても
笑い話に時が変えるよ
心配いらないと笑った♪

バンクーバー五輪、女子フィギュアスケート・フリー。自分の名前がコールされるのを緊張の面持ちで待っている浅田真央。直前に滑ったキム・ヨナがノーミスの完璧な演技で高得点をマークしていた。ほぼ絶望的なシチュエイションである。それでも真央チャンは敢然と3回転半のジャンプに挑んだ。成功、そして2回目にチャレンジ、これまた成功、もう泪が流れちゃって、とてもじゃないがマトモには見ていられない。そして3回目のジャンプ、あ!失敗した、そしてエッジを氷の溝に挟んでよろけてしまった。でも、真央ちゃんは一生懸命頑張った。よくやった、もういいよ。テレビに向かって思わず叫んでいた。

これ以上無理すると銀メダルもあぶなくなる。何故なら、母親の急死という悲劇を克服して、ほぼノーミスで頑張ったカナダの選手が好得点を得ている。あとはただただ、無事に滑ってくることを祈るだけ。そして終わった。表彰台に立つ真央ちゃんの顔、可哀相でマトモには見られなかった。こういう採点競技っていうのは、どうしても感情が入ってしまうからやだね。