◆トラ

初詣・富岡八幡

今年の干支は「寅」だってねえ。寅といえばフーテンの寅次郎、「男はつらいよ」の渥美清を真っ先に思い出す。「口上」や「啖呵」を使い、わりとありきたりな品物を売りさばく商売を「啖呵売」「口上売り」というが、寅さんのベランメー口調で、立て板に水を流すような「口上売り」「啖呵売り」は見事だったねえ。

<角は一流デパート赤木屋、黒木屋、白木屋さんで紅白粉つけたお姉ちゃんから下さい頂戴で頂きますと五千が六千、七千が八千、一万円はする品物だが今日はそれだけ下さいとは言わない! 並んだ数字がまず一つ。物の始まりが一ならば国の始まりが大和の国、島の始まりが淡路島、泥棒の始まりが石川の五右衛門なら、助平の始まりがこのオジサンっての>

<産で死んだが三島のお仙、お仙ばかりが女ごじゃないよ。京都は極楽寺坂の門前でかの有名な小野小町が、三日三晩飲まず食わずに野たれ死んだのが三十三。とかく三という数字はあやが悪い。三三六歩で引け目が無いという。ねっ、どう?>

<負かった数字が四つ、ほら四冊目。四谷赤坂麹町、チャラチャラ流れる御茶ノ水、粋な姐ちゃん立ちションベン。白く咲いたか百合の花、四角四面は豆腐屋の娘、色は白いが水臭い。一度変われば二度変わる三度変われば四度変わる、ゴホンゴホンと波さんが、磯の浜辺でねぇあなた、あたしゃあなたの妻じゃもの、妻は妻でも「阪妻よ」ときやがった。続いた数字が六つ。六だっ!>。延々と続くので、途中ではしょるが、この台詞を聞くだけで、この映画を見る価値があった。

めったにテレビドラマなんて見ないのだが、モノの弾みで見てしまって、妙に印象に残っているのが、数年前に放映された「タイガー&ドラゴン」。長瀬智也扮する新宿のヤクザ、山崎虎児が借金の取り立てに行った西田敏行扮する落語家林屋亭どん兵衛の噺に聞き惚れ、弟子入りしてしまったという設定からして面白い。出色だったのは「芝浜」や「饅頭恐い」などの落語の古典名作が劇中の「現実」とオーバーラップする展開だった。脚本を手掛けた天才、宮藤官九觔の仕掛けた着想が見事に当たった作品だった。

虎といえば、阪神タイガースだが、「ジャイアンツ命」を信条としている以上、永遠にダメ虎でいて欲しいね。寅年だからって変にハッスルされても迷惑千万この上ないからなあ。話替わって、「魚虎」と書いて「ハリセンボン」、「虎魚」と書いて「オコゼ」、「猟虎」と書いて「ラッコ」、「鯱」と書いて「シャチ」と読む。
次に虎に関することわざ、言葉など。「前門の虎、後門の狼」「虎の威を借る狐」「虎の尾を踏む」「虎に翼」「虎は一日千里を走る「虎穴に入らずんば虎児を得ず」「虎視眈々」「虎の子」「虎になる」「虎刈り」等々、「けっこう毛だらけ猫灰だらけ」、けっこうあるもんだなあ。