◆采配

お堀端

「采配を振る」「采配を振るう」、正しいのはどちらかという、文化庁08年度「国語に関する世論調査」での問いに対して、「振る」と答えた人は28,6%、「振るう」は58,4%だった。本来の言い方とされているのは前者、つまり「振る」なのだが。ただ、この結果はある程度予測されたことだったかもしれない。例えばグーグルで「采配を振る」というキーワードで検索すると、「もしかして 采配を振るう」と、本来の使い方でない方に誘導する機能があった。

しかも「采配を振るう」を認めていない辞書も少なくない。例えば、「明鏡国語辞典」では<近年「采配を振るう」が増えたが、俗用」と断じているのだ。「采配」とは元々、戦場で指揮官が持った房のついた棒のこと、敵に対する攻撃を命令する際に振るものだ。だから、応援ではフレーフレーという、いや、これは冗談、冗談。「采配を振る」のが正しいのは熟知しているが、我が家の家計では、にょうぼが当然のように「采配を振るっている」。

「立て板に水」という喩えがある。スラスラと話すことをいうが、その反対である要領を得ないまま、ダラダラとしゃべる様子を「横板に雨垂れ」っていう。あまり聞かない言葉だが、木目に逆らった横板の上では、雨垂れも滑らかに滑らないということのようである。おばあさんの回顧談ともなると、繰り返しの連続、こういうのって、まさに「横板に雨垂れ」って感じなのかもね。

「紅一点」の紅とはどんな紅なんだろうか。これは中国の詩人王安石の「万緑叢中紅一点」(緑の中に一つの赤いザクロがある)という詩の一節に由来している。っていうことは黒みがかった赤ということになる。あまりきれいな赤とはいえないなあ。因みに、女性の中に男性が一人だけいるというハーレム状態のことを、俗語では「黒一点」というとか。

「鉄漿」と書いて、「おはぐろ」と読む。漿(かね)とは鉄の液体のこと。鉄を酢などで溶かした液体に、「ふし粉」とういう粉を混ぜると、黒色の塗料になる。これを歯に塗るのが鉄漿で、江戸時代、既婚の女性専科で、この女は人妻だとうことを宣言するものだった。当時江戸には圧倒的に女性が少なかった事も関係ありそうだ。鉄漿は化粧という意味合いだけではなく、虫歯予防の効果もあった。なら、何故既婚女性にのみ許された特権だったんだろう。