◆ラールゴ

農林中金

これまでヘンデル作曲の「ラールゴ」として知られた曲だったが、キャサリン・バトルがサントリーのCMに登場し、この曲を歌ったことから、すっかり有名になってしまったのが「オンブラ・マイ・フ」。この曲は「世界で初めて電波に乗せて放送された音楽」としても有名で、1906年12月24日、初めてのラジオ実験放送でレコード演奏された。この曲がいままた、新しいCMで脚光を浴びている。

「オンブラ・マイ・フ」の曲に合わせて、カエルが見事な泳ぎを見せる。それもカエル泳ぎではなく、華麗なバタフライである。カエルの表情と、手の指先から足の指先まで見事に表現されていて、まさに秀抜だ。普段CMになると、そっぽを向いてしまうのだが、このCMは期待を持ってしげしげと見てしまう。申し訳ないことだが、スポンサーが豊洲に本社を構えるNTTデータだなんて、最近知ったことだ。

確かによく見てみると、<ITを活用してお客様の「かえる力=変革力」を推進します。お客様の変革をともに実現するパートナーとして、NTTデータグループがお手伝いします>とある。世界最初のラジオ放送で流れた音楽ということで、この曲とカエルを組合わせ、まさに「かえる力」というコンセプトを表現したということらしい。バックで歌っているのは、ソプラノ歌手の白石圭美で、堂々たる歌いぷりである。

以下、制作スタッフによる裏話である。<一生懸命に泳ぐカエルを表現するために、タイで8歳の少年モデルを選び、実際にバタフライでキラキラと輝く水の中を力強く泳いでもらい、この映像にカエルのCGをミックスしていった。まずは粘土でカエルのクレイを作成し、全体の大きさや身体の造型を立体化したほか、実物よりもかわいらしさを持たせた作りにし、「アニメすぎずリアルすぎないカエル」をつくった>

<作成したクレイを3DスキャナーでPCに取り込み、アニメーションとして動きや色をつけていく。水や光の照り返しを考えながら、カエルの周囲に水滴や泡を加え、動きを確認しながら、およそ970フレームにもわたる画像のひとコマひとコマに修正を施すなど、手間かかる処理を行って完成した>。このほかにもカエルの棒高跳び篇もあるが、このバタフライと比べると、やはりインパクトが弱い気がする。

「オンブラ・マイ・フ」(Ombra mai fu)は、ヘンデルの作曲したオペラ『セルセ』第1幕第1場の中のアリア。詩は木陰への愛を歌ったもの。従来より、この曲の速度記号から、「ラルゴ」とも呼ばれる。「オンブラ・マイ・フ」は歌詞の初行から。今日オペラはほとんど上演されないが、美しい小品として愛され、しばしば演奏される。元来カストラートのための曲だが、今日は主にソプラノにより歌われる。