◆遭難

日比谷公園

伊豆諸島の八丈島近海で24日から行方不明だったキンメダイ漁船「第1幸福丸」(8人乗り)を捜索していた第3管区海上保安本部は28日午前、現場海域で転覆している船体を発見した。船内から同日昼ごろ、3管の潜水士が男性3人を救助した。救出されたのは、いずれも甲板員の宇都宮森義さん(57)、早川雅雄さん(38)、鳰原貴光さん(33)。3人はヘリで八丈島に運ばれ、町立八丈病院に入院した。病院によると、3人とも脱水症状はあるが、意識ははっきりしていて会話もできているという。

世紀の大救出劇だったが、転覆した船底に残っていた酸素を吸いながら救出を待っていたという。救出時を報道するNHKヘリコプターによる報道写真はまさに出色のできだった。臨場感溢れる上に、ピントがしっかりと合った鮮明な撮影が目についた。しかし偶然とはいえ、3人が九死に一生を得た理由の一つと考えられているのが、自然の摂理だったという教訓には驚かされた。

狭い密室に取り残され、限られた酸素を吸い合い、二酸化炭素を排出しているわけだから、命運は尽きかけていたはずだ。それが元気で発見された大きな要因が自然の摂理だったのだ。足下に迫りつつある波が二酸化炭素を吸収し、泡立つ波が酸素を供給したという。この循環により新鮮な空気が供給され、あとは気力と体力だけ、3人がお互い励まし合えたのもよかった。

ところで、この記事を読んでいて、救出された甲板員の一人、鳰原(にゅうはら)さんって、ずいぶん変わった名前だなって思ったね。最初、鳩原さん、つまり「きゅうばら」さんと間違って読んでいたが、考えてみれば、鳩は「九ー鳥」と書くが、こちらは「入ー鳥」と書くから「にゅうばら」さんとなる。

鳰は「にお」又は「にほ」と読み、カイツブリの古名。におどり。[季]冬。カイツブリ(鳰)とは、カイツブリカイツブリ科に分類される鳥類の一種。全長は25cmほどで、ヒヨドリと同じくらいの大きさ。目は黄白色で真円に近く、小さく黒い瞳を持つ。季節にかかわらず、くちばしのつけねから目の前方まで黄白色の線が入る。日本では公園の池などを含む多くの川・湖・沼等に生息していて、古くから「にお」と呼ばれている。多くの地域で1年中みられる「留鳥」だが、寒い地方で繁殖する個体は冬には温暖な地域へ移動する「漂鳥」である。