◆モンスターペアレント

菊川橋

プロ野球界で成功した選手を見ていると、圧倒的に親子鷹が多いように見受けられる。大リーグのイチロー松井秀喜松井稼頭男がそうだったし、阪神の掛布、巨人の高橋、阿部、日本ハムダルビッシュなど典型的な親子鷹だった。ダルビッシュの父親を除けば、親が子供のためにアイデイアを絞り、練習方法を工夫したり、ともに汗を流したりして、息子の能力向上に努力してきた。掛布の父親なんか、重い廃タイヤを背中で引っ張らせ、グランドを何周も走らせた。「巨人の星」の星一徹なんか、その典型的な存在だったね。

いま、教育現場では学校や教師などに、わが子可愛さから理不尽な要求をしたり、自分勝手な言いがかりをつける「モンスターペアレント」が問題になっている。あのゴルフ界の寵児、石川遼の父親なんかがまさにその典型で、あのような勝手し放題の父親から、どうしてあのような礼儀正しく、きちんとした応対の出来る子供ができたのか、業界七不思議の一つとなっている。

野球の世界も例外ではないようだ。少年野球や高校野球でも、モンスターペアレントが横行していて、その言動に監督やコーチからスカウトに至まで、その対策に悩まされている。過保護な両親の元で育った選手は、カベにぶち当たったとき、親の助けを借りようとする。なにかうまくいかないことに直面すると、自分が努力しなかったことを棚に上げ、他人に責任を転嫁しようとする。だから、親の人間性を見極めることがプロ野球スカウトの重要な仕事の一つになっているという。選手は怪物であって欲しいが、両親の怪物は御免蒙りたいっていうことか。

親の気持ちも分からないではない。コチトラも経験したけど、我が子をレギュラーにするのはどうしたらいいか、ずいぶん試行錯誤をしたもんだった。バッティング技術を上げるために、毎晩のように息子の部屋に籠り、新聞紙を固く丸めて作った無数のボールを親がトスして息子に打たせるのだ。バットが鋭く回ったか、芯をしっかり捕らえたかは、音を聞けばすぐに分かる。

正しいピッチングフォームを習得させるために、先を結んだタオルを持たせ、シャドウピッチングをさせる。腕がうまくしなればビュッという音がする。これは球離れの際、右手の肘を右手よりも先に出させる練習になる。投げ終えた右手で軸足となる左足のふくらはぎを握らせる。これができれば体重移動がうまくできたことになる。その他色々考案したが、その甲斐あってレギュラーを確保できた。だからといって、監督とコーチの目を信頼していたから、ムスコを過保護する気にはならなかったね。