◆幻想交響曲

東大桔梗門

第一楽章 週末になると、近所の悪ガキどもが集まって、深夜までオートバイを空ぶかししながら走り回っている。しかも一方通行を逆走りもしている。いつまで経っても止む気配がないから、さっきから頭に来ていたオレはついに決心した。秘密のレーザービームを持ち出し、照準を合わせる。ダブル照準可能だから、前輪と後輪を同時に打ち抜くことが出来る。

待つこと久し、一方通行を逆送してきた二人乗りのバイクの両輪を射貫いた。バイクは転倒し、二人は投げ出されるが擦過傷程度の傷だろう。ついで燃料タンクに照準を合わせる。パっと花火が咲いたように火花が散る。集まっていた悪ガキが恐る恐る近づいていく。オレはそっと110番を回した。

このレーザービーム銃、宇宙の友人からもらったもので、自動照準に合わせておけば1分間に30発発射できる。夜間でも1000m先を透写し、追尾ミサイルのように目標を特定し追撃、見事命中できる優れもの。何よりも優れているのは発射された痕跡を残さないことだが、殺人兵器でもあるから、慎重な取扱いが肝要である。

第2楽章 我が家のベランダは1年中花盛りである。しかも水遣りと肥料は1年間一切やる必要がないという便利さである。この秘密はオレが開発した自然発酵用土にある。一度水遣りと肥料を施していれば、1年間ほったらかしていても大丈夫なのだ。加工された用土は水と肥料を保ち続け、それぞれの植物の光合成を促し、成長に合わせて、バランスよく1年間、養分を供給し続ける。花付きは抜群に良くなったし、葉っぱの色はつねに艶々と輝いている。

第3楽章 まだ、馴れ染めたばかりの恋人とすぐにでも会いたい。だけどまだ電話番号も知らない。ちょっとでも見かけたときに、走りより囁きたいのだが、いつも周りの目が光っている。まだ、ケイタイのように便利なものはなかった時代だ。ああ、どうしたらいい!切ない心の痛みに耐えかねて、思わず目が醒めてしまった。そばで、にょうぼがスヤスヤ寝息を立てている。なんだ、明日起きたらにょうぼに直接いえばいいんじゃないか、オレは、おならを一発すかし、安心して眠りについた。

残暑の幻想交響曲、なお、第4楽章、第5楽章は未完となっている。