◆ジェノサイト

長崎原爆記念の日

空梅雨とはいえ、梅雨が上がり、すっかりなりを潜めていたお天道さんが久し振りに大張り切りで地球を睥睨し、立ち尽くしている。あの神秘的な天体ショーを見せてくれた神妙な姿とはガラリと変わり、怒り狂っているようだ。と思っていたら、たったの一日天下、先島諸島、台湾を襲い、中国大陸に抜けたと思われる台風8号がユーターンして、九州地方に上陸しそうな気配である。一方台風9号は太平洋沿岸を中心に日本各地を襲いだした。日照不足にあえいでいた冷夏の東北・北海道地方の被害は更に広がりそうだ。

原爆投下から64年、広島は6日「原爆の日」を迎えた。 式典では、原爆が投下された午前8時15分、「平和の鐘」が鳴らされ、参列者全員が1分間の黙祷をささげた。3月末の国内外の被爆者は23万5569人。前年から8123人減った。平均年齢は75.92歳。この1年で死亡が確認された広島での被爆者5635人の原爆死没者名簿を、秋葉市長と遺族代表2人が式典で慰霊碑に納めた。死没者は計26万3945人。

20年8月6日午前6時頃、広島市民は敵機来襲の警戒警報を発し、市民は防空壕に逃げ込んだ。エノラゲイを含む敵機は広島上空を3回周回し、爆弾一つ落とさないまま播磨灘方面に消えていった。警戒警報が解除され、市民が防空壕から抜け出し、ほっとして通常の仕事を行っているその時、播磨灘方向から突如エノラゲイなど3機が引き返してきた。むろん、警戒警報のサイレンは鳴らなかった。そして、あのジェノサイトが決行されたのである。悪魔の手による恐るべき原子爆弾による壮大な人体実験だった。サイレンが鳴っていたら半数の人は助かったといわれている。

秋葉忠利市長は平和宣言で、「核兵器のない世界」を掲げるオバマ米大統領への支持を前面に出し、核廃絶について英語で「イエス・ウイ・キャン(絶対にできる)」と呼びかけた。 主役のいない式典は毎年のように続けられているが、後に残るのは空しさと無力感のみ。世界平和なんて、人類の争いが決してなくならない現実を見れば、空しい願望としか見えない。