◆華火

弘前ねぷた

今晩は毎年楽しみにしていた東京湾大華火大会がある。隣接地域の晴海で行われるため、さすがに仕掛け花火は無理だけども、低くゴチャゴチャと上がる賑やかなスターマインは見えるし、なにより夜空に大きく炸裂する1尺5寸玉の華やかな彩りは夏の夜の一大風物詩だった。数秒遅れて腹の底にドドーンと届く低音の響きは、参加する歓びを増幅させてくれた。華やかだが呆気ない夜の供宴に酔いしれたもんだった。

ところが、覚悟していたことだが、現実を目の前に突きつけられると、今年はもう見られないという絶望感がわいてくる。一昨年頃から始まった豊洲再開発の影響で、豊洲と枝川を隔てる豊洲運河の向こう側に、住友不動産3棟、三井不動産1棟の巨大な超高層ビルの建築が始まり、それがほぼ完成して、豊洲側の上空をピシャリとばかり塞いでしまったのである。既に完成している豊洲駅前には3棟の超高層ビルが林立しているから、アリが這い出るスキマもない。

景気の低迷で、売り上げが鈍っている住友不動産の宣伝文句に「東京湾の花火を独り占めにしましょう」なんてヌケヌケと書いてあった。華火大会の実行委員にはいつのまにか住友不動産三井不動産がちゃっかり収まっていて、悪ごしさにかけては相変わらずの素早さである。三井が管理する「豊洲ららぽーと」は絶好の見物場所、ここにはいち早く有料席を完備して、交通規制を敷き一般観客を閉め出した。

あんまり、しゃくにさわったから、線香花火を買ってきて、一人寂しくベランダで火を付けた。ところが最近の花火って中国製が多いらしく、チャカチャカと火花が散ったかと思う間に火玉が落ちてしまった。線香花火には日本人の智恵が隠されていて、落ちそうで落ちないその微妙さを競っていたから、それが楽しくて暑さをしのいだものだった。だけど、こんなチャチな線香花火では、やっている我が身が寂しくなっちゃってどうしようもない。「安物買いの銭失い」、「貧すれば鈍」、「太い物には巻かれろ」「負けるが勝ち」ってところか。