◆湿絶

不穏な天気

戻り梅雨か暴れ梅雨か。梅雨明け宣言後も湿る関東地方と、梅雨前線の居残りによる大雨被害が連発している中国・九州地方。湿絶とか人参雲、不可思議な気象用語と記録的な豪雨との落差が腑に落ちない(朝日新聞素粒子より)

湿った空気が太平洋高気圧を回り込むように、九州北部の梅雨前線へと流れ込んだという。いわゆる「湿舌」だ。湿った空気を乗せた風が、対馬海峡あたりで東よりの風とぶつかり、活発な積乱雲が次々にわいた。空の水源を決壊させた雲の連なりは、気象衛星からは先細りの扇状に見える。「にんじん雲」というかわいらしい名とは裏腹に、豪雨、突風と災いの巣である。(朝日新聞天声人語より)

人を鬱陶しい思いにする雨だが、あめの多い日本だけに、さすがにアメに関する言葉も多いね。「同じ字を 雨、雨、雨と雨で読み」、漢字の読み方の多さを皮肉った当て字漢字の傑作ともいえる川柳がある。「同じ字を アメ、サメ、ダレとグレで読み」と小粋に読み込んでいる。小糠雨、春雨、五月雨、時雨といった具合だが、そのほかにも驟雨などのように「ウ」とも読むし、雨雲のように「アマ」、梅雨のように「ユ」とも読ませるんだから、確かに雨の読み方は複雑多岐にわたる。

四季の雨っていえば春雨、菜種梅雨、五月雨、麦雨、梅雨、夕立、秋霖、時雨、氷雨寒九の雨などがあるけれど、雨は降り方によっても、色んな呼び名がある。霧雨、小糠雨、御湿り、涙雨、俄雨、村雨、沛雨、驟雨、スコール、天気雨、長雨、霖雨、宿雨など枚挙にいとまがない。雨に関する慣用句としては、狐の嫁入り、五風十雨、篠を突く、車軸を流す、恵みの雨、遣らずの雨、乾天の慈雨などあるが、「車軸を流す」とは雨脚の太い雨が激しく降る様子をいう言葉だ。

「菜種梅雨」は春未だ浅い頃、静かに降る雨をいい、「卯の花腐し」(うのはなくたし)は春雨と五月雨の間に降る雨をいう。「日照雨」(そばえ)は天気雨のことだが、狐の嫁入りともいい、夕立は村雨やにわか雨の総称ともいえる。「五風十雨」は気候が過ごしやすくて、世の中が平和であるという意味になる。

雨という言葉では、悲しむ女性が一際映えるもんだが、「雨やさめ」はひどく涙を流して泣くことをいい、「雨雫」は女性がさめざめと泣くことをいう。「雨降って地固まる」はよく冗談に地を痔に置き換えて、おちゃらけに使っているけども、「櫛風沐雨」は社会に出て辛酸をなめることをいう。