◆不正採取

アルストロメリア

富士山北麓の青木ケ原樹海から国の天然記念物の溶岩を持ち去ったとして、山梨県警富士吉田署は、文化財保護法と森林法、自然公園法違反の疑いで、静岡県富士宮市宮原の会社員(66歳)を逮捕した。同署の調べによると、この容疑者は6月7日午後1時ごろ、山梨県富士河口湖町精進の青木ケ原樹海で、天然記念物の大小11個の溶岩を乗用車に積み、持ち去った疑いが持たれている。溶岩は10〜35センチ大だったという。

同署によると、不正採取やごみの不法投棄などを監視する山梨県の非常勤職員「富士山レンジャー」が、岩をバールで壊して持ち去ろうとしている遠藤容疑者を見つけて注意したが、「これくらいいいじゃねえか。訴えるなら訴えろ」と言い残して車で逃げたという。同署が車のナンバーから遠藤容疑者を割り出した。山梨県などによると、青木ケ原樹海は文化財保護法に基づく天然記念物に指定されている富士山原始林で、自然公園法の特別保護地区にもなっている。

この新聞記事を見て、同じようなことを昔やったよなあって思ったねえ。アレは、確か昭和30年代後半だったと思うが、浅間山が噴火し、鬼押し出しに大量の溶岩流が流れ出したというニュースを見た。衝動的に熔岩の一部を取りに行きたいと思い、友人の1トン車で乗り込んだ。当時はこの手の物に対する規制なんてなかったから、絶好のチャンス到来と見たのだった。むろん高速道路なんてシャレタもんはなかったから、夜を走り抜け、明け方近くに現地到着、まだほの暖かい熔岩を50ケほど積み込んだ。ある意味でいえば、平和で無責任な時代だった。

二人りっきりだから、せいぜい積めるのは10キロ前後まで、もっと積めたんだけど、疲れちゃって、荷台の半分ほどしか積めなかった。帰路、吾妻川の川縁に降りて、今度は河原に点在する丸石を残りの荷台に積み込んだ。そして東京に帰ってきたのだが、その時の石は折半にした記憶がある。大きな石は後に調布の家に運び込んだりして、未だに置き石としても残っているし、小さな熔岩は盆栽の石としていまでも使っている。

その後は、東名高速を利用し御殿場で降り、舎利塔のある寺にある広大な手作り庭園の人工池の周囲に張り巡らされたスギゴケをはがし取ってきた。庭に池を造り、その周りに貼り付けたが、何回やったかなあ、けっきょく、気温と水の違いが致命傷となって、貼り付ける傍から枯れてしまった。その後も何回かこの寺を訪れたが、さすがにコケの持ち出しはする気にはならなかったね。ただ、コケの生育が早く、剥がした部分は次に行ってみると、ちゃんと生え揃っているのを発見し、罪の意識が薄れたのも忘れない。

あの頃って、けっこういい加減なことをやっていたのは事実だ。調布の庭をコケで覆いたいって欲望に捕らわれて、休日となると地方に遠征してコケを集めたものだ。多いときで30種類ほど集めたかな。むろん無断収集したものばかりでなく、園芸店で買った物もあった。ただ、コケを集める習慣なんて、当時は一般的ではなかったから、珍しいコケを園芸店で見つけるなんてことは至難の業だった。特に背の高いスギゴケは喉から手が出るほど欲しかった。

結局うまくいかず、次に手を出したのが、各種のシダ類、これも現地で採集したりして、けっこう珍しい品種を集めることが出来た。とりわけ出色だったのが、クジャクシダ、あのほの赤い茎の色目と葉の鮮やかさには目を見張ったね。他にもチャセンシダ、クラマゴケ、シノブ、ジュウモンジシダ、ノコギリシダ、ヒメワラビ、ベニシダ、リョウメンシダ、ヤブソテツ、ソテツ、イワヒゴ、ゼンマイなどなど、よく集めたもんだけど、けっきょくは長続きはしなかった。育てるより集める方に気が行ってしまったのが敗因だと思っている。