◆定点観測

延びすぎた若竹

朝食を済ませると、パソコンをスイッチオンする。ここんところ、オンにしてから、使えるようになるまでかなり時間がかかる。色々、ゴチャゴチャとウイルスソフトが動き回り、画面が現れてパソコン使用可になるまで、5分から10分程度かかってしまう。気の短い奴だったら、頭に来てほっぽり出したくなるだろう。だけど、コチトラ別に急ぐ訳じゃあなし、その間窓を全開にして斜め下に見える路上を歩く人々をなんとなくボサーっと見下ろして時間をつぶすことになる。

このボサッとした感覚がけっこう好ましい。出来れば、タバコの1本でもゆっくり吸いながらの方が、この定点観測には似合っていると思うんだが、ここんところ、1日1本のタバコのおいしさを味わうために、夕食後の1本と決めてしまったので、この不文律は止めたくない。いつまで続くか自分でも自信はないんだけどね。時刻はほぼ午前10時前後、今日も暑いと見えて、妙齢の女性(この場合、範囲はかなり広い)は一様に日傘を差している。それも、みんな地味目の日傘のようだ。

バギー車を急ぎ足で疾走するご女性の姿もあい変わらず多い。早起きなんだろうねえ、もう買い物袋をぶら下げて家路につく老人たちの姿も散見できる。こんな早くから、スーパーって開いているんかな、早起きの習慣がないコチトラとは無縁の世界だ。この辺りを歩く人たちは10年前にオープンした2棟の都営住宅か、数年前にできた買い取りマンションの住人、奥の方にある幾つかの倉庫会社や会社の従業員である。

比較的若くて、バギー車を押している女性は例外なしにマンションの住人、それほど高価な物は身につけていないが、なんとなくすかした雰囲気はある。チャンチャン帽やキャップをかぶって杖をついた老人たちは、間違いなく2棟の都営住宅の住人だ。カバンやハンドバックを下げて、携帯見ながら急ぎ足で歩いているのは奥にある会社の社員、斜めにバッグをぶら下げてダラダラ歩いているのは倉庫会社の従業員だ。ジイサンバアサンがヨボヨボ、オタオタ歩いている姿を見るに付け、自分の歩く姿もあんな風に見えているんだと恐怖心がよぎってくる。

ただ、この路地裏を含めた豊洲界隈は超高層ビルを始めとする新築マンションの群がる地帯、やっとの思いで手に入れた新居で、カップルライフを満喫した産物が主役の世界である。妊娠した女性やバギー車で歩道を我が物顔で闊歩する無法地帯でもある。「そこのけそこのけおんまが通る」、ってな具合で、この新住民たちは、生意気っていうか、傲岸不遜。古くから住む住民にとっては、危険きわまりなく、本当に有難迷惑な話だ。こんな愚痴がつい口を出てしまうのも、やはり年寄りの僻みか。