◆ふしぎな日本語

モノレール

分、城、重、庫、阜、これらの漢字は順番にぶ、き、え、ご、ふと読む。いずれもある意味では平易な読み方で通っているが、二文字を一文字にすると、こういう読み方があったのかと、いまさらながらビックリさせられる。順番に大分、茨城(宮城)、三重、兵庫、岐阜各県の読み方である。県名の他には殆ど使われない言葉に、大阪の阪、愛媛の媛、埼玉の埼、新潟の潟、栃木の栃、奈良の奈などがある。

文化審議会国語分科会は、社会生活で使う目安となる常用漢字表に新たに「岡」「俺」など191字を追加し、「匁」「錘」など5字を削除する新常用漢字表(仮称)の試案を審議し、了承した。3月と秋ごろにそれぞれ意見公募をし、修正を検討して来年2月の答申を目指す。パソコンなど情報機器の急速な普及に伴う漢字の多用化を踏まえた見直しで、「鬱」といった難字や「籠」「麓」など筆画数が多い字も入れた。1981年告示の現行表1945字から約1割、186字増え2131字になる。

2008年1月、府県名に使われている漢字で常用漢字に現在含まれていない「阪」「鹿」「奈」「岡」「熊」「梨」「阜」「埼」「茨」「栃」「媛」の11字を常用漢字に含めることを決めた。また、近畿の「畿」、韓国の「韓」などは公共性が高いとして追加。「挨」「拶」は熟語としての使用頻度が調査で高かったため含めた。また、現行の常用漢字の音訓に以下のものの追加が候補となっている。愛(え)、神(か)、岐(ギ)、児(ご)、滋(シ)、城(き)、分(いた)、良(ラ)。

驚いたことに、都道府県名の「茨」「埼」「阪」「岡」などは常用漢字表には含まれていなかったんだね。とりわけ、一般語として使用頻度の多い、岡山の「岡」が何故入っていなかったんだろう。また常用漢字の音訓に追加されるものが愛(え)、神(か)、岐(ギ)、児(ご)、滋(シ)、城(き)、分(いた)、良(ラ)。

次の漢字に音読みのふりがなを付けよ。「欧」「桜」「押」「横」「翁」…。お茶の子さいさい、すべて「おう」で満点さ――というのは現代かなづかい(新かな)の場合で、昔の人は大変だった。歴史的かなづかい(旧かな)では、上から順に、「おう」「あう」「あふ」「わう」「をう」となる。政府が告示によって旧かなを新かなに改めたのは終戦の翌年、1946年の11月である。旧かなを深く愛惜する人は新かなを使いたくない。なかには、新旧で表記が異なる言葉は用いず、新旧共通の表記となる言葉だけで文章を書く軽業師のような達人もいた。「いる」(ゐる)も「であろう」(であらう)も「考える」(考へる)も使えない。

日本国憲法の前文を、各地のお国言葉で表現してみようと始まったブログがある
。呼び掛け人は高知県の女性である。これまで47都道府県の多くから「翻訳」が寄せられた。一つの県から複数の訳文が届くこともある。「日本国民は、恒久の平和を念願し」が名古屋弁だと「うちら日本人は平和が続くことをどえりゃー望んどるがね」。土佐弁では「わたしらあは、この先ずうっと平和でおりたいいうて、こじゃんと強うに思うがです」となる。何とも心強くて憲法というイメージから来る堅苦しさはみじんもない。むしろ言葉の持つ温かさや、そこからにじみ出る土地柄に、思わずほっとする。新潟の方言も多様だが、「おらっては、なーご平和が続くの、すっげねごてるこてさ」といったところか。