◆霞か雲か

ショウブ

♪かすみか雲か はた雪かとばかり匂う その花ざかり
百鳥さえも 歌うなり♪

「霞か雲か」は明治16年3月に作られた小学唱歌集(二)に取り入れられた曲で、 ドイツ民謡に加部厳夫が訳詞したものである。まだ、文語体全盛の時代に口語体で分かりやすく訳した苦労の程がしのばれる曲である。

「霞」とは、霧や靄、煙霧などで遠くの景色がぼやけている様で、文学表現であり学術的定義ではない。「すやり霞」は、日本美術独特の表現手法だが、画面の随所に“霞”を描き込むことによって、余白的効果をもたらして画面が煩雑になるのを避けたり、同一画面内で複数のシーンを共存させ、シーンからシーンへと自然な形で遷移させるような効果をもつ。元来野山にかかる雲や霞を不定形のもやで表現したものであったが、絵巻物などに多用されるなかで次第に様式化され、一定のフォルムをもつに至った。

大気中の水蒸気は地面近くが冷えることで凝固する。すると小さな水滴となり、空気中を浮遊する、その現象が霧や靄と呼ばれるものだ。で、その違いというと、ともに視界が悪くなる点では共通しているが、両者は水平方向で物の形がはっきり見える距離、いわゆる水平視程で区別される。水平視程が1km未満なら霧、1km以上なら靄になる。「朝靄の中で」と使うときは、意外に遠くまで見える状況といってよい。

視界を悪化させる気象現象には、ほかに煙霧や霞がある。煙霧は靄と同じ視程1km以上で、湿度が74%以下のもの指し、75%以上を靄という。なお、霞は気象用語としては定義されていない。煙霧というのは、あまり聞き慣れない言葉だが、れっきとした気象用語である。煙のようにに立ちこめた霧や靄をいうが、著しくロマンを欠く用語だ。雲、雷、霧、霞、靄、霰、雹、雫、雪、霜、辵、露、霖、電、震、零、霹靂、思いつくまま羅列したが、部首が雨という字、けっこう毛だらけ猫灰だらけ、多いもんだ。

天気予報で気になる言葉がある。時々耳にする鹿行地方という呼び方だ。茨城県は歴史的慣習から、その地域を県西、南、北、鹿行の4つに分けている。鹿行とは利根川の沖積地、北浦の埋立地、海岸埋立地などに造られた鹿島行政区域の略らしい。鹿行地方とは、茨城県の東南部、鹿嶋市潮来市神栖市鉾田市行方市の5市を指している。