◆うつぎ

花見客

前回、ページが詰まっちゃって、中途半端に終わってしまった。そこで改めて、卯月について調べてみた。卯月は陰暦4月の異称。この月になると卯の花が盛りになるので「卯の花月」といったのが、詰まって「卯月」となったという説が有力のようだ。卯の花といってもあまりピンと来ないが、いろんな種類があるウツギのことである。季節を代表するには、あまりにも地味目で、なんで、このような花を取り上げたのだろうか。サトザクラやフジのように派手な花だってあっただろうに。

ただ、いまと違って、むかしの人のよき物っていうのはものすごく地味だったね。花の種類の少なかった昔は、5月に可愛く白い花を付ける卯の花が好まれたのであろう。「源氏物語屏風」を見たって、秋を代表する花がハギだっていうんだから、いと寂しきだね。尾形光琳著わすところの、「紅白梅図屏風」のウメにしても、「燕子花図屏風」カキツバタにしても扱う題材があまりにも地味過ぎるよね。もっとも地味な花を敢て取り上げ、派手に書き上げるのも、画家の力量の一つなんだろうけどね。

ウツギは茎や根の中心にある部分が空洞になっているので、「空ろ木」が変化して「空木」になった。材質は硬く、腐りにくい。昔から木くぎや神事のときの杵などに使われ、開花期は5中頃である。ウツギと呼ばれる落葉灌木は3種類あり、ユキノシタ科、スイカズラ科、フジウツギ科のどれかに属している。昔から歌に出てくるウツギはユキノシタ科のもので、枝の髄が中空になってまさに「空木」、スイカズラ科のものは中空ではないが、色が多様で楽しめ、フジウツギ科のものは、花のフサが大きくよく目立つ。

数は多いけれど、比較的よくお目にかかるのが、ユキノシタ科のウツギ、ヒメウツギ、マルバウツギ、バイカウツギスイカズラ科のタニウツギハコネウツギ、ツクバネウツギ、フジウツギ科のフジウツギなど。ハコネウツギのように、シロ、ピンク、アカと三色変化するものもあるが、全体として地味目で、花の形も面白くない。この花が咲き出すと、春の華やかな花の饗宴は終わったなって思い知らされる。