◆あうん

スイセン

「あうん」の「阿」は口を開いて最初に出す音、「吽」は口を閉じて出す最後の音であり、そこから、それぞれ宇宙の始まりと終わりを表す言葉とされた。また、宇宙のほかにも、前者を真実に、後者を智慧にたとえる場合もある。次いで、対となる物を表す用語としても用いられ、特に狛犬や仁王、沖縄のシーサーなど、一対で存在する宗教的な像のモチーフとされた。口が開いている方を阿形、閉じている方を吽形と言う。転じて、2人の人物が呼吸まで合わせるように共に行動しているさまを阿吽の呼吸、などと呼ぶ。

阿吽という言葉は、昔からどういう訳か、顰蹙、齷齪、憂鬱、忸怩、矍鑠、蘊蓄などと同じく、大好きな言葉の一つだった。それぞれの意味は千差万別で、どちらかといえば、後ろ向きの言葉が多いのはご愛敬だが、共通点は字画が多いか、難しい漢字ということになる。いってみれば、これらの漢字は書き方まで暗誦していて、ある時期までは自慢のタネだった。

コチトラ、ブログを幾つか書いているが、比較的早くからスタートし、未だにネタさえあれば連日書き綴っているのが、「あうん」である。阿吽という言葉が好きだったせいか、題名として一番最初に思いついた言葉だった。このブログは新聞記事に掲載された読み仮名つき、つまりルビ付きの漢字を探しだし、記事にするというもので、およそ4年ぐらい続いている。

インターネットで「あうん」と検索すると、どういうわけか一番最初にランクされていて、嬉しいやら戸惑いやら複雑な心境だが、次位はなんと浅草・吉原のソープランド、以下やたらとソープランド系が続く。確かにあうんの呼吸で致せれば、これは最高だと思うが、そうは問屋が卸さないのというのが、この世界の常識、あぶなげな店名に騙されるなよ、各々方といいたいね。そのかわり、コジーの「あうん」を読んでいれば、難しい字や読み方を知り、同時に一種の社会情勢さえ垣間見えるってんだから、これこそ、ツーといえばカーって物知りになること請け合いだって、寅さんもいっているよ。

この「あうん」、我ながらよく続いていると思うが、原則として毎日記載しているから、けっこう苦労も多い。本文の記事は出来るだけ少なくするのがモットーだが、ルビ付きの言葉を探し出すために、新聞の隅から隅までズズーイと目を通さなければならない。NHKのニュース番組の監視もしなきゃならないが、見つからない時はインターネットで地方新聞の社会面までも追っかける。それにしてもニッポンという国、狭いようで広く、広いようで狭いが、分からないことが多すぎる。