◆啓蟄の日

オオカンザクラ

きのう5日は冬ごもりの虫が暖かさにはい出すといわれる「啓蟄」の日だった。むろん旧暦上での節季だが、珍しく朝から晴れ渡って絶好の花日和となった。ここんんところ、日本列島上空では、連日「冬の低気圧」と「春の高気圧」が押し合いへし合いしており、目まぐるしく天気が変わっているが、どうも、まだ低気圧の方が強いと見えて、雨模様の天気が続き、一昨日なんか都心にも雪が降るような体たらく、寒さも一段と厳しかった。

ところが、きのうだけは、珍しく高気圧の方が押し勝ったようで、久し振りにお天道様へお目もじ出来たことになる。こうなれば、コチトラの体内に潜んでいた啓蟄も騒ぎ出して、ほぼ1週間ぶりの外出となった。出掛けてきて良かったよ、オオカンザクラは7分咲き、カワツザクラはほぼ満開、ギンヨウアカシア(ミモザ)は枝もたわわにまっ黄色の満艦飾、せっせと花粉をばらまいていた。

オオカンザクラにはメジロが群がり、せっせと蜜を吸っていたが、カワツザクラの方には寄りつきもしない。こちらのほうが蜜も豊富なのに、なんでだろうって、しばし考えちゃったね。その答えだが、メジロという鳥、人一倍、じゃなかった鳥一倍、臆病で用心深い性質だ。だから、オオカンザクラは大木で、てっぺんも高いので、安心して蜜を吸える。それに反して、カワツザクラはまだ若木が多いから、せいも低い、それで近寄ってこないんだろう。

この頃よくハクセキレイを見かけるようになった。ブルーのスマートな胴体に淡いグレーの羽、なんともお洒落なスタイルで、ちょこまかと歩き回る。その歩き回る早さといったら尋常じゃない。ハクセキレイは漢字で書くと「白鶺鴒」、また、木の枝に止まっていて、魚の影を見ると、嘴を真っ逆さまにして、水中に飛び込み獲物を見事にゲットするカワセミ、いまじゃ、滅多にお目にかかれない代物だが、これを漢字で書くと「翡翠」。新宿御苑でカンザクラが咲き出す頃、メジロヒヨドリの群れに混じって、インコが数匹花をついばんでいる姿を見かける。鵯(ヒヨドリ)、鸚哥(インコ)とやはり難しい字を書く。

ヒヨドリは灰色の衣装をまとったカラス並の大きな鳥で、なんとも憎たらしい。花の蜜に集まるメジロを集団で襲って追い出し、花を嘴でちぎっては地べたに落とす。ヒヨドリが現れると、オオカンザクラは花を散らされて、あっという間にミジメな姿に変えられてしまう。最近は都会にも住み着いていて、よく見かけるようになった。繰り返すが本当に憎たらしい鳥だ。