◆ゾロ

永代橋

バスが目の前で発車しちゃったり、ホームを駆け下りたら、目の前で電車のドアが閉まってしまった時、ああ、ついていないなあって嘆息する。それが度重なると、きょうはなにか悪いことがおきるのではないか、三隣亡なのかよなんて思ったりする。逆にバスの窓からや、電車のドア越しに乗れなかった人の顔を眺めながら、つまらない優越感に浸ったりする。自分もそうだろうけど、間一髪間に合わなかった人って、たいていは笑っているね。畜生、間に合わなかったという無念を笑いで誤魔化しているんだろうね。

ゾロというと、タイロン・パワーが颯爽と活躍した「怪傑ゾロ」をまず頭に思い浮かべる。剣先で壁や敵の背中に、鮮やかにZの字を描くシーンが鮮やかだった。目元だけの覆面と見事に調えられたヒゲとの対比も格好良かった。勧善懲悪って筋書きは当たり前すぎるんだけど、やはりワクワクさせられたもんだった。

ゾロといえば、「効果は同じで値段は半分」がうたい文句のジェネリック薬。薬を開発メーカー以外の会社が同じ成分で作った後発薬のことだ。医療費を少しでも安くしたい身にはありがたい薬だが、ジェネリックを敬遠する医師も少なくない。コチトラも同じ口で、増え続ける薬と単価の値上がりに悲鳴を上げたくなるほどだが、担当医の決意のほどを聞くと、なるほど、そんなもんかと納得させられる。

首都圏にある大学病院の医師によれば、うちの病院では2000種近い薬を使っているが、ジェネリック薬は20種類ぐらいしか認められていないという。その理由は品質への不安だそうだ。大学内である先発薬と数種類のジェネリック薬を独自に調べたが、薬の血中濃度が先発薬の1/11しかないジェネリック薬があった。薬の製法自体は特許切れで後発メーカーと同じ薬を作れても、それを薬剤やカプセルにするためのやり方は特許切れとなっていないケースがほとんど。そのため錠剤やカプセルにするための添加物や製法が異なり、薬の溶ける時間、吸収量などにも影響するという。

ジェネリック薬は特許が切れると、ゾロゾロでてくるので、ゾロ薬といわれていた。ゾロ薬は在庫が切れると販売中止になるケースも多く、医師が使い始めた矢先に、薬がなというトラウマが消えなかった。また、薬を開発していないから、適応症、副作用情報など使用上の注意が先発薬の丸写しのケースもある。結果、「いまは先発薬と同列には考えられないと考える医師も多いのだ。