◆高みの見物

冬まどか・晴海トリトン

冬うららの一日、いくら大好きとはいえ、転た寝ばかりしているのにも飽きが来る。快い暖かさに誘われベランダに出て、日光浴を兼ねながら周囲を見回す。そして、道路を隔てた向こう側で、建築中のワンルームマンション工事の仕上がり振りを眺めるのが習慣となった。間口4間、およそ50坪ほどの土地に8階建てを建てる計画のようだ。いまは道路上に据えた長さ30mほどのホイール・クレーンを操って、同じく路上に止めた車輌積載用クレーン付きのトラックに満載した鉄筋を少しずつ現場に移動しているところだ。2日前には、生コン車が待機して、別の特殊大型クレーンが生コンをパイプで吸い上げて、現場の各所に注入していた。

現場は足場が組み立てられ、柱周りには型枠がはめ込まれている。20人近くいる鳶の兄さん達が忙しそうに足場を走り回っている。多分生コンが注入された柱らまわりに、鉄筋を埋め込み、次第に階層を上げていくのだろう。工事が始まって3ケ月は経っただろうか、建物を建てるのがいかに大変か、いかに資材を使うか、いかに多くの工事に携わる要員が必要なのか、いかに天気に左右されるか、こんな小さな工事現場でさえ、そう思い知ったのである。

早朝からとどろき出る騒音が気になって、ベランダから眺めたのが最初だった。既存住宅の撤去、コンクリートパイルの打ち込み、シャベルカーによる土砂の搬出入、トラクターによる地ならし、基礎の鉄筋組み立てと生コンの注入、足場の組み立て、型枠のはめ込み---。基礎工事の段階が一段落し、第2期工事に突入したのが数日前からだった。、

折から未曾有(ミゾウユウじゃないよ)の金融恐慌の嵐、資材はどんどん値上がりするし、ここら辺に建物を建てるのは、中小建設会社に決まっているから調達資金も思うにまかせない、出来上がる頃にはマンション価格も下落しているだろうから、これだけ熱心に建設に従事しても、希望通りの収入を得られないだろう。ただ賃貸住宅らしいのが救いかもしれない。いずれにせよ、早く建てなければ、あっという間に不況の波に飲み込まれそうで、毎日そのでき具合を応援団はハラハラ、ドキドキしながら見守っている。