◆創作四文字熟語

落ち葉

ほぼ健診だけで雇ってくれた良き時代が「無病即採(そくさい)」なら、今の雇用不安は「家内暗然」だろうか。漢字四つで表す世相。以下、住友生命が募った「創作四字熟語」でこの年を振り返る。借金で消費を重ねたツケだろう。背伸びした米国の住宅ローンは「脆宅惨米(ぜいたくざんまい)」に終わり、リーマン・ブラザーズ破綻(はたん)の「兄弟減価」で危機に火がついた。それより前で幸いだったのが、縦横無尽に働くべき日銀総裁がいない「中央無人」の20日間。危機こそ出番の政界なのに、失言を残して閣僚らが退く「舌退(ぜったい)多数」がなお続く。

医療や年金の不安から、不老長寿の夢は「苦労長寿」に転じ、医師不足の「窮々(きゅうきゅう)病院」に妊婦の顔も曇る。学校では無理難題を吹っかけるモンスターペアレントが「猪突猛親(ちょとつもうしん)」した。食は今年も傷だらけ。小麦の高騰でパンもうどんも値上げの「粉群憤騰(こぐんふんとう)」、消費者担当相が孤軍奮闘しようにも、中国のウナギを愛知県産と偽る「鰻身(まんしん)相違」が足を引っ張る。

本番前に「聖火乱難(らんなん)」が五大陸を駆け抜けた北京五輪ソフトボールは上野投手が金の夢をつないだ413球の「好投夢繋(むけい)」、競泳は北島選手がひと掻(か)きごとに連覇に近づく「一掻占金(いっかくせんきん)」にわいた。片やマラソン高橋尚子さんは現役を引退、惜しまれつつの「活動Q止」に。

学生が大麻に手を出し、大学当局が頭を下げた「汚薬御免(おやくごめん)」もつらい。政治も経済も社会も、国ごと崖(がけ)の上にあるような日本だが、ひとり元気なのがアニメ文化。耳を澄ませば〈ポーニョポーニョポニョ〉と「四面魚歌(ぎょか)」の08年でした。

以上毎年恒例の、朝日新聞天声人語が「創作四文字熟語」を使った世相診断である。例年思うのだが、短い字数に四文字熟語をはめ込み、巧みに言いたいことを表現するテクノクラートぶりには、都度感心させられる。

今年19回目を数え、住友生命が主催する「創作四字熟語」には、政治、経済、社会など様々なジャンルをテーマに全国から9041作品が寄せられ、優秀作品10編と入選作品40編が発表されている。なお、審査員は歌人俵万智さんが務めた。