◆乾物屋

カエデ

きのうの嵐は一時的とはいえ、凄まじさがあったね。一天俄にかき曇りって感じだった。木々は大きく揺れ、落ち葉が道端を埋め尽くした。きょうは朝から晴れ渡っているが、心なしか陽の光は弱々しい。明日から日本列島は寒冷前線に覆われ、典型的な冬型気圧配置になるという。気温もぐっと低くなり本格的な冬将軍の到来となるらしい。

むかしは、町の中には必ず乾物屋というのがあったけど、最近は見かけなくなったね。スーパーや量販店があちこちに出来て、存在価値そのものがなくなってしまったんだろうか。どんな町にも、米屋、八百屋、魚屋、酒屋、用品店、本屋、畳屋、経師屋、雑貨屋、小間物屋、下駄屋、乾物屋、床屋、美容院、風呂屋、花屋、食堂、豆腐屋、鋳掛屋、質屋、文房具屋、ガラス屋などの店が小さなコミュニケーションを形成していた。兼業という店はほとんどなく、いずれも専門店だった。つまりわざわざ町の外へ出掛けなくても、生活が出来るという寸法だった。

乾物といえば、食料が少ない時代だったから、水につけると量がどっと増えるヒジキやワカメ、切り干し大根などがよく食卓に供されたものだった。「なんだ、またきょうも切り干しなの」、「贅沢いうんじゃないわよ、食べられるだけでもありがたいと思いなさい」、なんて会話もしばしばだった気がする。味噌汁の具にもしばしば登場し、うんざりしたもんだった。スルメや煮干し、かんぴょう、そしてカツオ節なんかも、出汁というより副菜の一つだった。それが尾を引いて、未だに猫まんまが大好物と来ている。

食べ飽きたことと、あの辛気くさい匂いが鼻について、二度と食べたくなかった切り干し大根だが、意外なことに素晴らしい栄養食品だってことが分かった。100g当たりのカルシューム含有量が、なんと牛乳の5,5倍、木綿豆腐の4,5倍もあるという。

骨を丈夫にするカルシュームといえば、小魚、牛乳と相場が決まっていて、学校で飲まされた脱脂牛乳のまずさの後遺症もあって、しばらくは牛乳も飲めなかった。気がつけば、あの頃、知らず知らずのうちに、牛乳の不足分を切り干し大根で補っていたわけで、これも自然の摂理みたいなもんだ。