◆リラクゼイション

丸ノ内

我が家の風呂は、給湯、追い炊き、湯温調節、入浴剤、ローテーション、掃除など、一応すべてがコチトラの管轄内にある。かくして、A型人間の持つ独特のくだらないこだわりが満ち溢れた快適生活が保たれている。とはいえ、A型人間の持つ、もう一つの欠点もあるから、自分がこだわらない部分はまったく無視してしまっている。たとえば掃除、目につく部分は徹底的に洗うけど、それ以外の部分はまったく無視してしまう。

入浴剤は通常はレッド、パープル、グリーン、イエローの4種類を使い分けている。以前は、これに大好きなミルク色の濁り湯を加えていたが、浴槽や風呂釜を汚しすぎるので、泣く泣くギブアップしてしまった。夏場はブルー、冬場には、更にオレンジ、ピンクを加えたローテーションになる。平常時のローテは寒色系のレッドとバイオレット、暖色系のグリーンとイエローをそれぞれ交互に使い分けている。

レッドは唐辛子、パープルはラベンダー、グリーンは蓬、イエローは柚子、ブルーは薄荷、オレンジは生姜、ピンクは桜の香りが主成分となっている。いわゆる薬湯の部類に属するわけだが、湯上がりの時、身体にまつわりついた強烈な香りには、我ながら恥ずかしい感じがする。枯れ木に花の賑わいだからだ。

さて、1週間ぶりに新湯を立ち上げる日、原則として新湯に最初に入るのがコチトラ、にょうぼが出掛けていたから、日中にゆっくりと楽しむつもりだった。きのうまでが暖色系だったから、きょうは寒色系にしようと決めていた。ところが、競馬のジャパンカップを見たり、女子ゴルフ最終戦の最終ホールでの思わぬ展開にドギモを抜かれたりしていて、湯沸かしをすっかり失念、夜11時過ぎに立ち上げる羽目になってしまった。沸き上がったのが12時ちょっと過ぎた頃、英プレミアムリーグの見逃せない試合、マンチェスター・ダービーが始まっていた。

「先に入るわよ」の一言で、にょうぼは風呂場に向かった。しまったと思ったがもう後の祭り。新湯に先に入られるのが嫌だった訳じゃない、にょうぼは典型的なO型人間だから、入浴剤を入れるに当たって、ためらいなく一番手前にあるものを手に取るだろう。手前にあるのはきのうまで使っていたイエロー、使うつもりだったレッドではない。果たして予感通り、イエローのレンチャンになっていた。これには、もうがっかり。唐辛子入りのレッドで大いに寛ごうという計画はオジャンとなった。