◆歌唱力

六義園

最近のテレビを見ていると、圧倒的にクイズ番組が多いね。もともと雑学や漢字には興味があるから、初めのうちは喜んでみていたが、いまじゃすっかり飽きてしまったね。どの番組も同じような趣向で、出てくる面々もほとんど同じ顔ぶれ、知識はあるけれど落ち目の芸能人や、ここに活路を見いだそうとするにわか勉強のお笑い芸人たちだ。同じような面々がテレビ局をぐるぐると回って、ひな壇に座っているのを見せられているようなものだ。類似した問題もよく出るし、ネタもだんだん尽きてきた。

クイズ番組に押されて、歌番組が極端に減ってしまったね。いまじゃ演歌歌手の出られる番組なんかほとんど見られなくなった。それなのに、年末の紅白歌合戦は演歌歌手総出演といった趣だから、聴いたこともない歌ばっかり聞かされるか、昔流行った歌をナツメロ風のアレンジで聞かされるのがおちだ。派手な着物姿の女性演歌歌手は聞き慣れない曲を歌うことが多いんだけど、感心するのは、まず絶対に音を外さないね。

それに引き替え、最盛期には高音や美声を誇っていた、シンガーソングライター連中の声の衰えは耳を覆いたくなるね。特にひどいのが南こうせつ、「神田川」なんか、5音近く落としていて、あの嫋々とした高音の余韻など感ずべきもない。武田鉄矢は論外としても、さだまさし井上陽水も高音が延びず、音と声がすっかり落ちちゃったね。ステージでは歌より語りが多くなると聞いているが、それもむべなるかなである。

音域の狭いかれらだから、高音を落とせば低音がザラつくのは自明の理、聞かされる方としては、たまらないほど、歌がつまらなく聞こえる。そういっちゃなんだが、自己流で突き進んできた連中ほど、年を取るに従って、基本をおろそかにしてきたツケが目立ってしまうね。その一方で、たまにクラシックの歌手が紅白などに登場するが、その圧倒的な美声には感心するものの、テンポ音痴で、抑揚がなく、歌がどれも平板でつまらなく聞こえてしまう。ただ、単に声がいいだけでは通用しない世界でもあるんだねえ。

「三つ子の魂百まで」っていうことわざがあるけど、ほぼ50年前にコーラスをかじったことが、いまでも役に立っている、っていうか歌を聴いていても知らずにチェックしている自分がある。合唱団ではろくに楽譜も読めないまま、先輩からの口移し状態で歌を覚えたものだったが、それでも腹式呼吸や声の出し方など、基本的なものは知らず知らずに身についていて、いまでも役に立っている、おかしなもんだねえ。