◆人工庭園

晴海トリトン

小春日和の中で、食後の一服をしみじみ味わい、至福の一刻を泪目で味わいながら、ふと思ったことがある。週に1度は訪れる晴海トリトンの人工庭園。ここは他には見られないゆとりと安らぎを与えてくれる場所だ。四季折々の草花が、専属の園芸員によって手厚く管理栽培され、見る目を楽しませてくれるのだ。だけど、特筆すべきは、公園のあちこちにしつらえてあるベンチに必ず灰皿が置かれていることだ。10分おきに見回ってくる係員が、灰皿周りを丁寧に清掃し、常に快くタバコを据える場所なのだ。ダレにも遠慮なくタバコを吸える場所があるなんて、いまの世にはまさに奇跡に近い神聖な場所だ。サラリーマンが満足そうに紫煙をくゆらせている姿は、端で見ていてもほほえましい光景だ。

いつの日よりかタバコ吸いはまるで犯罪者扱い、人によっては、まるで蛇蝎を見るような目でにらみつける。もっともっと変えなくてはいけない世の中の仕組みはわんさとあるのに、何故、タバコ吸いがこのようにいじめられるのか、まったく理解に苦しむのである(もっとも、これは、あくまで喫煙者の一方的意見に過ぎないが)。かって、ボーリング場が雨後の竹の子のように、全国に蔓延してポシャリ、ゴルフブームに乗って、全国津々浦々の貴重な国土をぶっ壊し、ゴルフ場ができあがったが、その後は倒産の山、いまじゃ競技人口も激減してしまった。

喫煙者を同列にするわけにはいかないが、日本人って、どうしてこうも熱しやすくて冷めやすいのだろうか。ここ、晴海トリトン住友商事が管理している。住友系列といえば、関西人特有のえげつなさや冷酷さが目について、好きになれない企業体だけど、晴海トリトンの庭園管理と、人に与える満足度は東京一といってもよく、口に出していいたくはないんだけど、つくづく度胸の据わった立派な企業だなって賞賛する次第だ。日中にたばこを吸うのをやめたコチトラにとって、喫煙席のあるトリトンのベンチは地獄のむしろに座っているような気がしないでもない。だが、ダレに気兼ねもなく、おいしそうにタバコの煙をくゆらせる人を見ているだけでも、なんかいいものを見たなって満足できるのである。