◆白昼夢

ペニンシュラホテル

最近、朝晩がめっきり涼しくなってきたせいか、つい出かけるのが億劫になって、昼下がりは、家でうたた寝していることも多い。北側にある玄関の扉を少し開けておくと、大開きした南面との風通しが良くなって、至極快適な気分でまどろんでいる。さて、最近、うたた寝していると、必ず見る夢が迷子になった夢だ。

この前なんか、親子3人で自転車に乗っていて、ふと道をそれると、そこは調布のはずなのに、目の前に突然深い渓谷があらわれた。3人で自転車をほっぽり出して一斉に駆け出した。素晴らしい清流が流れており、随所に小さな滝が落ちている。あまりの素晴らしさに見とれていて、「あ!しまった。なんでデジカメを忘れてしまったんだろう」。

二人の姿を見失って、慌ててポケットをまさぐっても携帯電話が見つからない、「これじゃ連絡も取れないじゃないか」。それから二人を求めた苦難の旅が始まるって次第だ。さて、どうして渓谷らしきものが現れたのか、それはうたたね直前に見ていたのが、中国雲南省桃源郷といわれる村のルポだったからだろう。

息子二人はまだ若々しく溌剌としていて、コチトラもまだ若いらしい。らしいというのは夢の世界では、常に自分の姿は出てこないからだ。情景はおそらく40年ぐらい前、デジカメや携帯電話なんかなかった時代、このミスマッチも面白い。そうそうコチトラのリュックサックには、どういうわけかナビスコ・ビッツが入っていて、3人で分け合って食べていたっけ。

この前見た夢はやはり迷子になった夢。どうやら競輪中継を見ながらまどろんでいたらしい。いつの間にか愛知県一宮市に行っていて(実はここでオールスター競輪が開催されているのだが)、家に帰ろうとして財布を忘れたのに気がつき、四苦八苦する姿である。歩いて帰るらしく、行く先々で、天竜川、富士川、大井川、馬入川などの大河に行く手を阻まれるのである。そして、最後の難関がどういうわけか荒川、戸田橋を渡り始めると、赤羽側の橋がない。どうしようもないから、回り道をしてさらに道に迷うって寸法だ。

そういう情景を、どうせ、また夢を見ているんだろうと、冷めた目で見ている自分がいる。懐かしい時代に、その当時なかったIT機器が入り込み、その情景を第三者として見ている三次元の世界がミスマッチしていて、妙に生々しい。いつまで迷っていてもしょうがないから、そろそろ、ここらで目を覚まそうとしている潜在意識も空恐ろしい。