◆霜降の候

2階建てバス

<赤組の先駆けがハナミズキなら、黄組はユリノキだろうか。街路樹の色づきである。ユリの木と書いてみて、カタカナ、ひらがな、漢字が並ぶ珍名に気づく。名前より不思議なのが、シャツのような葉の形だ。半纏木(はんてんぼく)という別名の通り、職人さんが着るはんてんを思い浮かべてもらえばいい。やっこ凧や軍配にも似るオンリーワンの愉快な姿に、自然の妙技を見る>

ユリノキは北米原産で、日本には明治初期に渡来した。新宿御苑では樹齢130年を超す第一世代が、元気に葉を茂らせている。どれも、幹回り3メートルはあろうか。中でも芝生の広場に寄せ植えされた3本は、根や枝が絡み合い、異形の生命体を思わせる。どの入園者より長生きの三つ子。見上げれば、迷彩柄の「シャツ」はまだちらほらだ。突き抜ける空の下で、緑の大群が「慌てなさんな。ざざざー」と手を振っていた。きょうは節気の「霜降」、ひと雨、ひと風ごとに秋色は深みを増す。赤組と黄組が抜きつ抜かれつ、山から里へと転げ落ちてくる>

以上、10月23日付天声人語(一部省略)からの引用だが、今日の最高気温はまだ、23度もある。とても中秋の気候ではないから、いつものような時候に紅葉が見られるとは思えないが、確かに一雨ごとに秋が深まっていく感じだね。イチョウといえば、神宮外苑が通り相場、でも時期になると人が多すぎて、ゆっくりできない。穴場として通うのが、東京海上正面辺りの行幸通り、イチョウの黄色と、東京海上の煉瓦色との配色がマッチグー。近くに和田倉門恩賜公園があるのもいい。富岡八幡のイチョウ並木もバカに出来ないよ。実をいえばバカにしてたのはコチトラ、山本一力の時代小説を読んでいて、思い知った。コチトラ門前仲町を、よく門仲といっているが、地行幸通りの人は仲町と呼んでいたっていうのも、教えられたね。

札幌の街路樹で、ナナカマドの赤い葉っぱと深紅の実がとっても印象的だった。ナナカマドというと、高山地帯を真っ赤に染める低木の主役という印象が強かっただけに、ナナカマドの比較的高木が街路樹に使われていること自体が
予想外だった。東京では少数派だから、あまりお目にかかれないが、紅葉といえば、やはりカエデとハゼが多数派かな。紅葉にしろ、黄葉にしろ、落ち葉、つまり朽ち果てていく葉っぱだから、全体的な眺めは壮観だが、接写するとミジメに写ってしまうのが難点だ。また、赤と黄色という色はデジカメにとっては強敵で、中々うまく写らないのも事実だ。