◆屈辱の日々

夕暮れ

プロ野球セ・リーグの首位攻防戦、巨人―阪神は21日、東京ドームであり、巨人が9―5で逆転勝ちし、首位阪神に同率で並んだ。巨人は7月8日には首位 の阪神で今季最大となる13ゲーム差をつけられていた。今月11日からの16年ぶりとなる10連勝で、一気に差を縮めた。以後、広島に9−1と圧勝、4−4の引き分けを挟んで、11連勝を継続している。

思えば長い屈辱の時代が続いたものだ。オギャーと生まれてこの方、根っからのジャイアンツ・ファンだった。巨人・大鵬・卵焼という、半ば付け焼き刃的な人気が出る前からの生粋のジャイアンツ・ファンだった。それがいつの日か、人目を避けてタバコを吸うのと同じような感覚で、ジャイアンツ・ファンであることを口にするのもはばかれる時代が長く続いた。

親会社による有力選手の阿漕な引き抜き、それでもちっとも強くならないチームの現状。一時他チームの4番打者が1番から7番まで続く強力打線を作ったこともあったが、チームとしてちっとも機能しなく、無様な試合を多く演じ、つくづくジャイアンツに嫌気を指した時期もあった。インターネット速報で、また負けているって確認し、がっかりする以前に、それを当然のように受け取っている冷めた自分に愕然とすることもあった。それでも、常に気にはなっているのであって、たまに勝つことがあれば、スポーツ新聞をなめるように読み尽くすのである。

今年は開幕ダッシュに失敗し、球威がまるでないエース上原は出ると負け、見るも無惨に打ち込まれ、他の先発当初陣も悪い流れに引き込まれた。セ下位チームから金にあかせてかき集めた4番打者、有力投手、有力ストッパーがほとんど機能しないまま前半戦を終えた時は、首位を独走する阪神タイガースになんと13ゲームも離されていたんだから、ダレだって、やっぱり、いつもの通りだなって、半分あきらめの境地になるのも当然だ。

ところが、中継ぎ陣の意外な健闘、とりわけ2年目の山口と越智の頑張りが投手陣に活気を呼び戻し、グライシンガー、内海を中心とするローテーションが円滑に回り始めた。すると、それに呼応するように、怪我で前半戦不調だった小笠原が当たりを取り戻し、安定していた4番ラミネスとの強力打線が機能し始めた。若手選手の成長も著しかった。鈴木、亀井、坂本などがレギュラーの一角を脅かし始め、谷、木村、古城、大道など他球団からの移籍組も与えられた場所で実力を発揮し始めたのである。8月から9月にかけては、小笠原の鬼神のような活躍ぶりが目立ち始め、ラミネス、李承菀、阿部と続く強力打線は連日のようにホームランを連発、投打のかみ合った理想的展開が実現可能となったのである。でも心配の種は尽きない。