◆カロリー

パンパスグラス

テンプラのかき揚げというと、近頃ではエビをたっぷりと使うのが流行っているようだが、あれははっきりいって蛇道じゃ。江戸前かき揚げってやつは、小柱に三つ葉を混ぜたものを熱い油でさっと揚げる。むろん、小柱には東京湾で獲れたアオヤギの柱を使うのが建前だ。ついで、イカかき揚げを楽しむのが通の食べ方だ。どちらも軽くあっさり揚っていて、その食感を楽しむのである。お茶漬けにするのもよし、熱い蕎麦に載せるもよし、あのジュッとした音の響き、ああ、食べたいなあ、思わず生唾を飲み込んでいる。

従来外食で好んで食べたものに、テンプラ定食、ロースかつ定食、ハンバーグ定食、うな重、天丼、かつ丼ビーフシチュー、ソースやきそばなどがあった。いまでも食べたいなあと思いつつも、値段との相談がネックとなって、たまに食べても安物で我慢してきた。うな重なら麻布・野田岩ヒレカツなら日本橋・かつ吉、ロースカツなら浅草・ゆたか、メンチカツなら根岸・香味屋、てんぷらそばなら日本橋・室町砂場、天丼なら銀座・天国、寿司なら代官山・すし勘。むかしは口もおごっていたし、そこそこ小銭も持っていたので、自分の口に合う店を見つけては、はるばる出かけたもんだったが、いまは昔、そうやってマメに動くこと自体が億劫になってしまった。

さて、ここからが本題である。5月の教育入院以来、この手の食品には一切手を出していない。値段が高いということのほかに、高カロリーということがネックとなっているからだ。例えば、店で食べると、定食形式でヒレカツ(925kcal)、ハンバーグ(990)、てんぷら(830)、丼ではかつ丼(1020kcal)、天丼(880)、うな重(800)といった具合で、1日1600kcalのうち、昼食または夕食だけで、1日許容量の半分以上いってしまうんだから恐ろしい。

ところが、血糖管理が順調に進み、空腹時血糖がほぼ100前後に落ち着くようになってくると、またぞろたべたいなあという気持ちが兆し始めている。3食をやりくりすれば、トライしてもいいんじゃないかって願望がいや増してくるのだ。いまの年齢になってくると、食べることが最大の喜び、贅沢かもしれない。たまには美食に飢え切った哀れな子羊に神の慈悲があってもいいかな、なんて勝手に思っている。