◆鉄板の上

ムクゲ

「ギンギラギンにさりげなく」なんて、かっこつけてはいられないね。朝早くから、太陽は燃えたぎっており、ベランダに出ただけで、猛烈な暑さがどっと押し寄せてくる。20日以上続いた真夏日の総仕上げがきょうの猛暑日だとばかり、お天道様は嵩にかかったように攻め込んでくる。家の中に入ると、ここは別天地、南北を開けはなっているから、爽やかな風が通り抜けていき、涼しさを演出してくれる。

同じ造りの部屋なのに、両隣の両家にはこの風の道がないそうで、特に道路ばたに面している方は熱がこもり、車の騒音も多いという。たまたま、我が家の向かい側は、風の通り道を邪魔する障害物がないことがこの快適な居住性を生んでいるようだ。寝転がって悠々と涼を楽しんでいたら、両側の家の外付けのファンがガタガタと鳴り出した。どうやら、暑さに耐えかねて、クーラーを動かし始めたらしい。

こうなると、まったくお手上げとなる。両家で排出された暖気が風の通り道を逆流して室内に入り込んでくる。こうなりゃ、いたしかたない、防衛上窓を閉めて、大嫌いなクーラーを入れざるを得まい。クーラーって奴、とってもなれなれしくて、うっかりその魔力に引きずり込まれてしまうと、もういうがままの体たらくとなってしまうからね。先月二人の息子夫婦が子連れでやってきて、彼らにしてみれば、クーラーは生活の一部になっているから、家中ガンガンに冷やされてしまった。

初めのうちは、ギンギラギンに冷やされるのを、内心では怒っていたが、意志とは反対に身体の方がさっさと適応してしまった。この慣れが怖いのである。かれらが帰った後しばらくは、その魔力から中々解放されず、ついついクーラーをつけてしまう悪習が身につきかかったのを、やっと払拭できたのに。ああ、なんたるチア、サンタルチア、アーメン、ザーメン、ミソラーメン。

最近朝方になると、ベッタリと汗をかいていることが多い。夢見心地で玄関のドアを開け、南面のガラスを開け放ち、空気の通りを良くしてから、再び寝入る。それにしても暑いねえ。この暑さがある限り外出もままにならないし、家の中でゴロゴロしているしか手がない。まもなく北京五輪は始まるし、高校野球も佳境に入る。当分クーラーをかけて、家に閉じこもる生活が続きそうだ。