◆山場コマーシャル

ユリ

場面を盛り上げるだけ盛り上げておいてから「正解はCMのあとで」「最新情報はこのあとすぐ」。こんなテレビの「山場CM」が多い番組に視聴者が不快感を抱いていることが、榊博文・慶応義塾大教授(社会心理学)らの調査で明らかになり近著で発表された。国際比較でも日本の山場CMは欧米より格段に多い。テレビ局側の思惑とは裏腹に、そうしたCMへの好感度が低くなり商品の購買意欲も下がるという。

調査では、視聴者をCM明けまで引っ張ろうとする山場CMに対する印象として、強い肯定から強い否定まで九つの尺度で聞いた。「不愉快」について86%が肯定。CM明けのシーンの繰り返しには、74%が「イライラする」と回答した。山場CMを含む番組については、84%が「好感が持てない」。山場CMの商品について42%が「好感が持てない」、34%が「買いたくない」と回答。それぞれ60%前後あった「どちらともいえない」を除けば大半がマイナスの評価だった。

話の流れが落ち着いたところで出る「一段落CM」と比較すると、山場CMが「商品を買いたくない」で3.8倍、「商品を覚えていない」も2倍と本来の効果をうち消していた。また、日本と欧米のテレビ番組の山場CMを02〜03年に比較した。ニュース、ドキュメンタリー、ドラマなど7分野で各国の代表的な3番組ずつを録画して比率を調べた。その結果は、日本の40%に対し米国は14%で、CMのタイミングが法律で規定されている英国は6%、フランスにいたってはゼロだった。

1時間の放映番組の中で、どのくらいCMを見せられるのか、この前試したら、通常のCMは5分に1回、8ケのCMが3回、5ケのCMが3回、これに山場CMが挿入されるんだから、もうたまったもんではない。つまり5分毎に、番組を細切れで見せられていることになる。あまりにもバカバカしくなって、途中でテレビそのものを消してしまったが、最後まで我慢して数えていたら、おそらく気の遠くなるほど多くのCMを見せられただろう。

そんなわけで、一人でテレビを見ているときは、NHK専門、地上デジタル3本、BS3本、計6本あれば、少しでもましな番組がある。民放で大好きな雑学関連の番組があるときだけ、やむを得ず見てしまうが,CMになると、音を消してしまう。だから、その頻度の多さに、かえって疲れてしまうという体たらくだ。