◆匂い

クチナシ

この時期、強烈な匂いを発するのが、道端に咲くクチナシの香り。決して嫌いな匂いではないけど、かなり個性的で臭覚を刺激する。カサブランカにしろ、バラにしろ、初めのうちはいい香りにうっとりするが、室内にあったりすると、その香りがあまりにも強烈すぎて、次第に気持ち悪くなってくる。このクチナシなんかは、多分その最たるものだろうね。

ひと昔前、まだ黒髪ビンビンだった頃、もっぱら愛用していたのがポマード「アメリカンブリアン」だった。しゃれた容器もかっこよかったが、なんといっても、その圧倒的な甘い香りに魅せられたね。髪にしっとりとなじみ、その上、ちょっとした風などでは乱れないのが憎かったね。当時の男性用整髪料は圧倒的に油性ポマードが全盛で、仕上げは丹頂チックだった。ほかのポマードが植物成分主体だったのに、このアメリカンブリアンはただ一つ鉱物性だったから、複雑な匂いも可能だったんだろう。

ただ、鉱物性ゆえの欠点もあった。洗髪すると、汚れと匂いが落ちにくく、シャボンで3回も洗わなければならなかった。当時、まだシャンプーなんてしゃれた代物はなかったから、なおさらだったね。シャボンは泡立ちのいい牛乳石鹸を愛用していた。もっとも、テレビ「光子の窓」の主題歌を歌っていた「ザ・ピーナッツ」の歌に影響されていたのも確かだね。ポマードも色々な銘柄があったが、「ケンシ」は上品だったが地味だったし、「柳屋」と「丹頂」はポピュラーだったから嫌だったし、岡晴夫の「エーワン」は甘ったるい匂いが気に入らなかった。

クチナシの花には強い芳香があり、学名の種名「jasminoides」は「ジャスミンのような」という意味がある。品種改良によりバラのような八重咲きの品種も作り出されている。乾燥させた果実は古くから黄色の着色料として用いられた。また、発酵させることによって青色の着色料にもなる。これは繊維を染める他、食品にも用いられ、サツマイモや栗、和菓子、沢庵を黄色に染めるのに用いられる。

ポマードの植物性は、ひまし油、木蝋などに香料を練り合わせたもので、べたつきが強い。植物油を用いるため原材料臭が強く、それを隠すための香料が多量に配合されている事が多い。 鉱物性はワセリン、ミネラルオイルなどを練り合わせたもの。植物性と比べると、さらっとした使用感があるが、洗い落ちが悪い。原材料臭の少ない鉱物油は香料が少なくて済むという特徴を持つ。