◆腐臭

豊洲で信号待ちをしていると、地下の下水溝から、イワシのはらわたの腐ったような臭いが突き抜けてくる。そう、あのすえたような不快な臭いで、人間どもが作り上げた、この臭いと激しい突風はどうやら豊洲名物になりそうだ。超高層ビルが次々とお目見えするに従って、この有難くない名物はますます加速してくる。都市計画上の間違いだったかどうか分からないが、少子の一時的人口増を満たすため、突貫工事で作られた豊洲第2小学校。空を圧するばかりの超高層ビルに周囲を囲まれ、まるで監視塔つきの監獄のように見えてくる。

確かに豊洲の人口は急増している。普段はあまり気にならないが、休日ともなると、ショッピングセンターはものすごい混みようで、客は圧倒的に若い夫婦が多い。ほとんど例外なく、生まれたてのあかちゃんをスリガーでだっこするか、バギー車を押している。あるいは4-5歳の子供連れも多く見受けられる。休日を見る限り豊洲は完全な若者の街と化し、年寄りは肩身が狭い思いだ。しかし、知らず知らずのうちに若者のエネルギーを吸収できるんだから、まんざら捨てたもんでもないってことになる。

九州では豪雨が続き、河川が氾濫しているというテレビの報道だが、こちらは朝から今にも降り出しそうな気配を見せるが、肩透かしされる。人をおちょくったような天気で、ようやく降り始めたのは,日付が変わった辺りからで、それもどしゃ降りというわけにはいかなかった。決して梅雨が好きではないが、空梅雨が続き、地面はカラカラ、植物は青息吐息といった有様。雨にこだわるのは、季節の風物詩、雨に濡れたアジサイをどうしても撮りたいのだ。

退院して一番先にやったことはベランダの水やりだった。にょうぼがたまには水やりをしてくれたようだが、やっぱ、気になってしょうがなかった。家のベランダにはどことなく腐臭が漂っていた。ここ数日好天が続き、ベランダの土も乾ききっていて、せっかく咲いた花のつぼみもぐったりと、こうべを垂れている。それが腐臭の原因、とっても良くない状態だが、なんとか間に合いそうだ。

散ってしまった花がらを切り取り、枯草、枯れ枝を取り除く。だらしなく伸びきった枝を剪定し、水をたっぷりと与えるが、乾いた土は際限なく貪欲に水を吸い込んでいく。まもなく「助かったぜ」とでもいうように、ベランダ全体から強烈な匂いが立ちあがってきた。これは腐臭ではなく、よみがえった命の証しを示す返礼の匂いだった。とりわけゼラチャンの放つ匂いが強烈だったね。