◆肥だめ

芝浦工大豊洲

閑だから、売店東京新聞スポニチを買い、夕方にはにょうぼが持ってくる朝日新聞朝夕刊を隅から隅までズズーと読み下す。掃除のオバサンにずいぶんお勉強ですねって冷やかされるほど、常にゴミ箱は一杯だ。改めて思ったけど、朝日新聞って三流新聞になり下がったね。目ぼしい記事は単なる垂れ流しだし、政治に対する意見にも自分の主張がない。韓国で米国の牛肉輸入問題で連日ストが起きているようだが、ジャーナリストは常に民衆の側にいるのを痛感するね。

特に顕著だったのは、まるで悪夢のような秋葉原の無差別殺人事件。朝日新聞はいつものように、取り澄ました第三者的な報道姿勢、まるで福田首相が発言する他人事のような言動に終始していた。そこへ行くと東京新聞スポニチ、スポーツ報知の写真と記事は鮮烈だったね。記者が現場にどんどん入り込み、インタビューも生々しいものが多かった。通りいっぺんに報道するだけでなく、事件に突入しようとする熱意にあふれていたね。

さて、各新聞の特集記事から幾つか。江戸時代の「肥だめ」はまさに循環型社会の優等生だったという囲み記事。汚穢屋が各家庭の便所をさらっていき、汚穢船が汚穢を満載して東京湾沖に放棄するなんて光景は、戦後やたらと目にしたもんだった。キツネに化かされて、風呂だと思って入ったら肥溜めだった、なんて話はよく聞かされたっけ。江戸時代、し尿は放置しておくと悪臭ばかりでなく、感染症の源泉となる。しかし、し尿を肥だめに入れておくと、嫌気性細菌の代謝作用で、安全な肥料として安定化された。こうして都市住民のし尿が肥料として農村に運ばれ、その肥料で作られた作物が都市で消費されたのである。

帝号を称する国、つまり「帝国」とは複数の王国を支配する大国で、「王国」とは王爵の国をいう。幕末の頃の帝国とは、ロシア、中国(清)、トルコ、神聖ローマ帝国ムガール帝国、日本の6カ国だったと、ロシアの古文書にあったという。江戸幕府が列強の中に入っていたとは意外だが、海外ではそのように評価されていたらしい。徳川幕府が成立すると、分国支配する大名(諸王)に君臨し統括する幕府の状態を帝国とみなしていた。

当時欧米諸国では、帝国は王国より上の最上国家とされ、ロシア滞在中7回もエカテリーナ女帝に召しだされた漂流者、大黒屋光太夫が厚遇されたのも、カレを帝国の臣民とみなしていたからだ。江戸時代というと、とかくバカにしがちだが、為政者にも立派な人がけっこういて、新田を開発したり、運河を掘削したり、川の流れを変えたりする国家的事業のほか、自然循環型の流通組織を作っていたなど、新たに見直されている。