アマリリス

病院ベッドでのうたた寝から目覚め、なにもやることがないから、テレビのスイッチを入れた。溌剌とした肢体が画面を動き回っている。「なんじゃい?これ?」って思いつつも、既に目は点となって画面を追っかけている。NHKの番組だぜって不審に思いながら見ていると、まもなく聞きなれた音楽が聞こえてきた。なんだ、ラジオ体操か、ずいぶん様変わりしちゃったんだなあ。それにしても近頃の女性のスタイルのいいこと、8頭身どころか10頭身に見えるね。

そういえば、ガキの頃、家でも学校でも職場でも、よくやっていたなあ。簡単な運動なんだけど、終わると結構しんどくて、サラリーマン時代はどちらかといえば苦手の口だった。肉体美を斜に眺めながらベッドの上で、身についているラジオ体操第一をやってみたけど、思うように体が動かない。あちこちが錆びついていてギシギシと音を立てる。でも悲しいかな、メロデイを聞くと魔法にかけられたように身体が勝手に動いてしまうが、ダンダン音楽と合わなくなって遂にギブアップ。情けないことに、もう既に身体のあちこちから悲鳴が聞こえてくる。

ラジオ体操第2というのは、それほど覚えていないけど、第1はほぼ完璧に覚えているね。若い頃植えつけられたものは、幾つになっても身についているもんなんだなあ。そういえば、合唱で初めて歌った「森の歌」だけは、歌詞も曲もはっきりと覚えているし、30歳代得意にしていたカラオケの曲だって、未だに忘れていないのも不思議だなあ。

ラジオ体操は1928年、簡保によって創設され、今年80年を迎え、いまでもNHKのラジオとテレビで、年中無休で放送されている。いまのラジオ体操第一が始まったのは1951年。だれでもできることに重点が置かれたというが、それに筋力を鍛える動きが加えられたのが第2で、翌52年にスタートした。計26種類の運動は、身体をまんべんなく動かす動作が巧みに組み合わされている。高齢者などにも優しい動きを取り入れた「みんなの体操」を合わせると、準備運動を含め、合計15分弱、全身を動かすから、57カロリーを消費できる。

や、や、57カロリーっていえば、ほぼ1単位余計に食べられる計算じゃあないか。チーズ1ケかナビスコ4枚、バナナ半分のどれかってとこか、やってみるべしだなあ。そうだ、間食したけりゃ、ラジオ体操をやればいいんだ。ビジョビジョにも会えるし、空腹にも打ち勝つことができる。でも、とても続ける自信はなさそうな気がするね。