◆拾った話

サクラの若葉

先だってコジゼラで、チョー・ヨンピルの「釜山港へ帰れ」の出だしを<♪コブシ咲く あなたは帰らない♪>と書いたようだが、これは大きな間違い。正しくは<♪ツバキ咲く あなたは帰らない♪>だった。コブシ咲くは、あの国民的歌謡曲千昌夫の「北国の春」の一節だった。<♪辛夷咲く あのふるさとへ帰りたい♪>。いやはや、飛んだトンボ、もとえ、とんだチョンボだった。<とんだところに北村大膳>ってなわけだ。

さて、<「サンタ・マグノリア、枝にいっぱいひかるはなんぞ」。 向う側の子が答えました。 「天に飛びたつ銀の鳩」>という一節がある。これは宮沢賢治の作品「マグノリアの木」という作品の一部だ。新しもん好きだった賢治は、コブシをハクモクレンと見誤ってマグノリアと書いてしまったようだ。当時コブシはモクレンとは別の花だったが、国民的詩人のチョンボとあってはほっておけなくなり、現在では辞書でマグノリアとひくと、コブシやタイザンボクなどのマグノリア系も包括されている。

<♪アカシアの雨に打たれて このまま死んでしまいたい♪>。トテシャンの西田佐知子が、ハスキー・ボイスでささやくように歌っていた。あれは心にしみこむいい歌だった。ムスコの関口知宏がNHKの旅番組などで活躍しているのをよく目にするようになって、改めて、時の流れに身を寄せていた自分がいて、カレを自分の息子のような目で見ているのに気がつく。ここで、ダンナに一切触れていないのは、あのトテシャンを、あっという間にかっさらっていった男に対する怨嗟が、いまだに心の片隅に残っているからだ。

さて、アカシアといえば札幌ということになるのだが、実は札幌にはアカシア並木はない。あるのはニセアカシアの並木道だ。札幌っ子には、自慢のアカシアに、偽物名が冠されているという事象に我慢できないらしい。「国語大辞典」を引くと、<「にせアカシア」というのは「針槐(はりえんじゅ)の異名」である。明治期に日本に輸入された当初は、このニセアカシアをアカシアと呼んでいた。後に本来のアカシア(ネムノキ科アカシア属)の仲間が日本に輸入されるようになり、区別するためにニセアカシアと呼ぶようになった>とある。

ギンヨウアカシアがミモザだということが、日本でもようやく認知されてきた。フランスではミモザシャンソンで歌われたり、花束に使われたり、フランスを代表する花である。先日ギンヨウアカシアを撮っていたら、通りすがりのOLに、「ミモザですね」って声をかけられ、ドギマギした。けっこうな美人だったことと、若い女性がこの花を、ちゃんと知っていたこともうれしかったね。