◆とちる

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近頃、新宿御苑通いが多くなったから、連日のように地下鉄に乗るようになる。いままでは有楽町線で市ヶ谷、都営地下鉄に乗り換え新宿3丁目下車というルートが一般的だった。ただ、行きは市ヶ谷で離れたホームまでエスカレーターを上り下りする不便さがあった。ところが俳句をやっているにょうぼから、いいルートがあると教えられた。有楽町線で永田町、南北線で四谷、丸ノ内線で御苑前というルートだ。確かに最短距離かつ一番安い料金ではあるが、南北線で一駅だけ乗り換えるのが面倒くさい。

最近は乗換えが便利な有楽町線で市ヶ谷へ、JRで千駄ヶ谷へ、往復ともこのルートだが、帰路は都営新宿線新宿三丁目から有楽町線市ヶ谷乗換えが、行きと違って近いので利用することも多い。ま、都営がタダというメリットもあるからね。とにかくスイカの減る速さったら、あきれるほどのすごさだからね。

東京メトロで発行している無料PR紙はなかなか充実していて、けっこう読み応えがある。月刊誌だが、メトロガイドは季節に合わせた都内の情報満載で楽しく読める。5月号で二つばかり気になる記事があったので、転載する。一つはとっても文章が下手だが、誠実さが感じられる椎名誠の「いい店見つけた」、小エビと小柱を散らしたかきあげてんぷらそばを出す店の紹介だ。人形町のある富沢町「砂場」という、いかにも古風な風情のそば屋だそうだ。読んでるだけで、もう食べたくてしょうがなくなった自分がいる。さっそく食べに行くべし。

二つ目はあの小俣雅子のコーナー。打ち合わせとか、「二の舞を踏む」、「二の句が継げない」、「舌の根も乾かぬうちに」、「呂律が回らない」、「音頭を取る」、「聞くだけ野暮だ、」「やたらとトチる」、「太平楽を決め込む」、「帳消しにして」などなど。これら、ふだん使い慣れている言葉が伝統と格式を重んじる「雅楽の世界」から来た言葉だというから、驚きだ。

たとえば「打ち合わせ」、打楽器のテンポを決めたり、拍子の変わる箇所を確認する作業をいうそうだ。また、「トチる」、これは龍笛の譜面(口移し)をカタカナで表す楽譜が震源地で、「チ」で始まるブロックと「ラ」で始まるブロックを交互に繰り返し演奏する。だが、「ラ」の前に「ト」の合図を送る約束になっている。「チ」から始まるはずなのに、「ト」の合図を送ってしまうことを「トチる」というんだそうだ。雅楽もちょっと身近に感じてきたなあ。