◆球技

サクラ・アマヤドリ

子供のころから慣れ親しんできた、っていうより、焼け跡ではこれしかやるものがなかった野球。母が手作りしてくれた布製のグラブと木の枝を削ったバットで戦った三角野球から始まり、少年野球、そして、弱小チームだったが、一応高校球児となり、青春のすべてを捧げた野球だった。ところが、いまではジャイアンツにはわずかの関心だけは残っているものの、野球に対する情熱は完全に失われてしまった。一番大きな理由は野球がつまらないこともあるが、ほかの球技、サッカー、ラグビー、アメフト、バレーボールなど、スピーデイな球技が次々と登場したからである。

いま、日本で一番人気のあるのがサッカーだが、個人的には国内の試合にはあまり興味がない。とにかく点が入らないし、試合の攻防も単調でゲームとしての面白さに欠ける。ただ、イングランド・プレミアリーグとなると、話は全く違う。世界各国から集まった選手たちがフィールドの中を縦横に駆け巡り秘術の限りを尽くして戦う。グランドはまさにスピードと格闘技の合わさった強烈な戦場となる。アメフトのシーズンが終わったら、同じく深夜にプレミアリーグの録画中継が始まり、放送が終わるのは3時過ぎとなる。従って相も変らぬ寝不足が続いていることになる。

ラグビー大好き人間にとっては、三洋電機の初優勝に終わった「日本ラグビー選手権」が、ものすごいインパクトを与えてくれた。実をいえば、コチトラ、サントリーのファンで、その揃った陣営、清宮監督の采配、それまでの勝ちっぷりといい、大差で三洋電機に圧勝するものと思っていた。ところが試合開始早々、三洋は怒涛の進撃で、あっという間にトライを重ね、試合は予想外の展開となり、終わってみれば、思いもかけなかった大差の負け戦となってしまった。

この試合で、ひときわ目についたのが三洋電機の司令塔、スタンドオフトニー・ブラウン選手だった。ニュージランドの強豪オールブラックスで活躍した選手だが、とにかく凄いの一言につきる。究極のピンチやこぼれ球へ文字通り体を張って飛び込んでいく。相手の選手が密集の中で倒される中には、必ず猛タックルを仕掛けたブラウンの姿がある。さらに凄いのはキックの正確さ、守りで劣勢だったチームを一瞬のうちに有利に導いていく。高々と上げるハイパント、地面を転がすゴロパント、いずれも守備側の死角とキックを追う味方の走力が緻密に計算されていた。