◆運のつき

新宿御苑

毎度、シモネタで恐縮だが、同じシモネタでも前ネタではなく後ろ向き専門ということでご勘弁を。
我が家から片道3000歩から5000歩の圏内に大型商業設備がある。近場にある豊洲のビバホーム、豊洲ららぽーとを除くと、南に辰巳イオン、西に晴海トリトン、北に門仲のアブアブ赤札堂、東に木場イトーヨーカドーがある。近頃運動不足のせいか、歩いているうちに腹がこなれてきて、なんとなく催してくる。パブロフの犬じゃあないけれど、目的地に近付いてくると、運を落とさなけりゃっと、腹が騒ぎだす。

そんなこんなで、これら商業設備のトイレ事情は知悉している。どこが空いているか、どこが汚いとか、どこがゆったりと寛げるか、どこが慌ただしいとかも心得ている。とりわけ、ヨーカドーに入ると、当然のようにパブロフの犬が騒ぎだす。ここの穴場は3階にあるシネコン「木場シネマ」のトイレ。ここのトイレは映画館の場外にあり、っていうことは映画の観客以外も共用できる仕掛けだ。ここはゆったりした個室が10ヶ並んでおり、映画上映中は閑古鳥が鳴いているから、なんの遠慮もなくゆっくりと寛げるわけだ。

その他の商業設備はフロア毎、あるいはセクション毎に設置されているが、一般的には男子用個室は2ヶだけ、入ってしまうと空いててよかったなって思う反面、早く出なきゃって脅迫観念にも捕らわれて、落ち着つかないことおびただしい。個室を出るとき、まわりにダレもいないことを念じつつ、恐る恐る出るのだが、あのなんか悪いことをしたような罪悪感と間の悪さって、どうしてわいてくるのだろうか、運を落としに入ったのに、運のつきといった感じになる。

さて、某月某日、辰巳イオンの個室。しばらく運気を養っていたら、なにやらドアの外に人に気配、やがてケイタイでのヒソヒソ話が聞こえてくる。なにやら異様な雰囲気に、いたたまれずに早々と身繕いして個室の外に飛び出した。外に出てみて驚いたね。ドアの外に殺気立った男が3人並んでいた。コチトラ、人様のトイレだというわけではないが、出てくるまで最低で3度は水を流す。たぶん、この連中水を流す音が聞こえたから、イザ見参とばかり準備を始めたが、一向に出てくる気配がないのにいらだっていたのだ。恨めしそうな顔でにらみつけて、最初の男が臭気漂う個室に突進していった。ちなみに個室は3ケ、いずれも満室だった。