◆ときめきの春

御苑のコヒガン

日月と小雨混じりのうすら寒い日が続いていて、このまま4月に入ってしまうのは、どうも切ない気がしないでもない。サクラ散るが早まってしまいそうだ。3月中旬の暖冬のせいか、ソメイヨシノが一気に咲き始めた。まさに突如咲き出したという印象が強い。連日新宿御苑通いが続いているが、その圧倒的華麗さにはただもう、目をうたれてしまう。「サクラ咲く」は待ちに待った言葉だったが、待ちかねて、いたたまれなかった気持が堰を切ったようにドドーっと迫ってくる。華やかなサクラに取り囲まれていると、ひとりでに浮き浮きしてくるのは防ぎようがない。

ソメイヨシノヤマザクラなどサクラ色一色に彩られた中に点在する、紅色はヨウコウとコヒガン、コシノヒガンザクラである。燃えるような紅色がヨウコウ、薄紅色がコヒガンとコシノヒガンザラだ。ちょっと遅れて咲くのが純白のオオシマザクラである。春先に咲くサクラは他にもたくさんあるが、これら6種類が代表的品種で、特徴はいずれもが一重ということで、この辺りにももののあわれが感じられる。そうそう、リストもれしちまったが、シダレもサクラ色、一重である。サクラのほかにも忘れちゃいけないのが、ボケ、ゲンペイモモ、ヒデコブシ、カリンなど、手入れが行き届いているので、花の色が鮮やかだ。

4月中旬になると、サクラも一変してサトザクラの世界となり、純白のイチヨウ、ショウゲツ、真紅のカンザン、薄紅色のフゲンゾウ、ベニシダレ、黄色のウコン、緑のギョイコウなど、色とりどりの八重桜が咲き誇る。この時期に開花するサクラの種類は30種類を超えるので、新宿御苑のサクラについてはセミプロ化しているコチトラでも見失ってしまうものも数多い。未だにケンロクエンキクザクラとシラユキの写真はゲットしていない。

そうした中でも印象的なものは、横に張り出した枝先にみっしりと純白の八重をつけるイチハラトラノオ、薄紅色の大輪を咲かせるフクロクジュ、菊桜の典型といえるバイゴインジュズカケザクラ、一重だが、優雅で切ない思いを感じさせるゴショミクルマミカエリザクラ、赤紫のチョウシュウヒザクラ、なにせ数が多いし、照る日ばかりじゃなく曇る日も多いから、新宿御苑には連日のように通うことになる。この間、小石川植物園北の丸公園にも通わなきゃならないから、やけに忙しくなるけど、、これも楽しみの一つだ。