◆福祉

モニュメント

帰りの道すがら、あるバス停の前に、数人の女性がたむろしていた。雰囲気からいって路線バスを待っているようにも見えない。やがてやってきたのは福祉車両、身体障害児を預かるバスだった。バスの扉が開くと、レールがするすると伸びてきて、その上を車いすに乗った障害児が何人か降りてきた。女性たちは出迎えに来た母親たちだった。こういう車両がバス停を利用するんだっていうことも初めて知った。確かにこの方がお互い分かりやすいもんなあ。この光景を見ていて、まず頭に浮かんだのは、まことに申し訳ないが、我が家の二人のマゴたち、五体満足に生まれてよかったなあって思いだった。

われわれが住んでいる建物の1階に、在宅ケアサービスセンター、老人介護サービスセンターがあり、土日を除く毎日、3−4台のバスが大勢の老人たちを運んできて、夕方になると、また乗せていく。要するに身体が不自由なお年寄りをまとめて介護する施設らしい。ときどきのぞいてみたりすると、元気な老人たちは自転車をこいだり、屈伸運動をしたりしている。この設備はちょっとうらやましいね。だが、大方は疲れきったような顔をしたお年寄りたちで、無表情に与えられたカリキュラムをしぶしぶこなしている。

昨年より税金を払うようになって、収入は公的年金だけ、支出は増えるばかり、とりわけ顕著なのは介護保険だ。毎年のように、金額が改定され、それも減ることは決してない上に、少ない年金から、自動的に引き落とされる。いずれは介護保険のご厄介になる身だから、あまり文句もいえないが、厚生省の行う施策は抜本的なものがまるでなく、いつもその場限りの緊急対策ばかり。なにかが起これば、たちまち火だるまとなり、世間の批判を浴び、事後対策にてんやわんや、結局なす術すらない。そのくせ、自分たちの身分については将来を見据えた見事な設計がなされている。どうやら、厚生省の高級幹部を、そっくり他の省のそれと入れ替えるくらいの荒療治が必要なようだね。