◆花火

花火

歩いて3-5分の所に5つの橋がある。朝凪橋、鴎橋、白鷺橋、蛤橋、枝川橋の5つで、枝川地区は周囲を運河で囲まれた埋め立て地であることがよーく分かる。洪水に備えた閘門はそれぞれの運河の流域と隅田川に4ケ造られており、緊急の際には一斉に扉を閉じる仕組みになっている。だけど、その状態を実際に見たわけではないから、どのくらいの実効効果があるのかは、単なる机上の空論のようだ。なにしろ、川も水位よりも低い土地柄だから、なにが起こっても不思議ではない。

越中島、門仲に抜ける道路に架かっているのが蛤橋、小粋な名前とは裏腹に、老朽化した鉄橋である。普段はだれもなんの感慨もなく渡るだけの橋だが、毎年8月半ばに行われる東京湾大華火祭では景観が一変する。大勢の人が詰めかけ、晴海沖であがる花火に熱狂する。ここで見るのは今年が最後だろうとさびしい気持ちで見ていた。豊洲再開発で高層ビルが林立するであろう来年は、おそらく手前に大きな壁ができてしまうだろうからだ。

閑だから、蛤橋に立って豊洲方向を見渡してみた。もう既に見晴らしは皆無の状態、目下建設中の住友不動産の45階建てツインタワーが30階ぐらいまで空に伸びている。ガラスカーテンウオールのしゃれた建物だが、平成21年3月には1000所帯が入居する。その並びには三井不動産らによる43階建て、外観だけが完成している豊洲タワーが聳え立つ。ここには800所帯が入居する予定で、すでに全室売約済みという景気の良さだ。

従来からあった豊洲超高層ビルはいずれもオフイス専用ビルだったから、夜になると暗くて寂しい印象が強かった。だが、今後できるものを含めると、11ケの超高層ビルが並び立ち、そのうち5棟は居住者用だから、夜景もぐっと鮮やかになるかもしれない。朝凪橋から見る佃リバーサイドの夜景は絶景だったが、これからは自宅から摩天楼の夜景を楽しめるかもしれない。でも、間違いなく、花火は見えなくなる。